あるていどのきけんを覚悟しましょう
※パラレル、幼馴染設定。





side:I



さわりと触れるくすぐったさに、午睡に落ちかけていた臨也の意識が浮上する。

「…シズちゃん?」

そろりと目を開け、優しく触れてくる手の主に呼びかける。
応えはなく、また、さわりと撫でられて目を閉じた。
シズちゃんに撫でられるのは好きだ。
いつもの怪力が嘘に思えるほど優しい手に身を委ねて為されるままに任せる。
指先が髪を潜る。地肌を伝ってこめかみ、頬、目元と移動していくのが分かる。
喧嘩する時は一切手加減なんてしないくせに。
さてどうしたものかと考えていると、頬にキスが落とされた。
ちゅっと軽いリップ音を静かな室内に響かせて、幾度も落とされる唇。
目を開けていないから状況がいまいち分からない。
シズちゃんがどんな顔をしてこんなことをしているのかも。
ただ、場所を変えてしつこく繰り返されるそれは明らかに何らかの意図を持っていた。
そして、あきもせずに繰り返されたキスが、ついに唇に降りてくる。
ついばむ様なそのくすぐったさに身を捩ろうとするが、その前に口付けが深くなった。強引に抉じ開けられて舌が絡められる。

「んっ」

慌てて目を開けたが、明らかに一足遅かった。
シズちゃん相手に機先を制し損ねるなんて、いくら眠かったからといっても不覚だ。

「ん…うーっ」

声は封じられているが、とりあえず唸って抗議に代えてみる。
引っ張り出された舌を散々弄ばれる。甘噛みされて、我慢できずヒクリと身体が震えた。
くっそ、何でそんなに上手いんだよ!
圧し掛かられた体勢では隠し持ったナイフでの反撃もできやしない。

「ちょっ、し、ずちゃん!」

息継ぎの為の僅かな合間で力の入らない手でぺちぺち腕を叩くが、その手首は掴まれ押さえ込まれてしまう。

「うぜぇ、黙れ」
「ふっ、う…」

また口付けられた。
そのまま割り込んでくる強引な舌に抗議の意を込めて噛み付いてやる。
ああくそ。なんで歯が立たないんだよ。少し血が出るだけだなんて反則だろ!
深くなるキスに息ができず、苦しさにもがいた。

「…ッ!!」
突如舌に激痛が走る。

「ぃ…ッ」

ズキズキと痛む舌と先ほどより濃厚な血の味に、ああ噛まれたのかと妙に納得した。
何をするのだとぼやけた視界に映る相手を強く睨んだが、しまった。たぶん煽った気がする。

「…っ…あっ……ぅ」

たっぷり舌を舐って快感を煽るだけ煽ってから開放される頃には、もう抗う気力なんか残っていなかった。
零れ落ちる涙をシズちゃんの舌が掬い取る。
こっちは息を整えるだけで一苦労だというのに、余裕なことだ。ああムカつく。
荒い息のまま埒もあかないことをつらつらと考える。
と。

「臨也」

呼ばれて顔を向けて、思わず息を呑んだ。
真っ直ぐに射すくめる、雄の気配を濃厚に感じさせる視線。
まるで血の匂いに興奮した獣みたいだ。
まあ、それに晒されて喧嘩の時のように気が昂ぶるあたり、俺も同類なんだろうけど。

「…なあに、シズちゃん」
わざとらしく笑ってやれば、些か機嫌を損ねたのかシズちゃんの顔が歪む。
「したいの?」

でも直裁に聞けば素直に頷いてくる。

「じゃあ、しよっか?」

そんな可愛い幼馴染相手に今日は焦らす気は起きないから素直に応じる。
俺は伸ばした腕を取られて、キスされる心地よさに目を閉じた。












※いっそ忌々しいほどに甘い時間はまだ続く。  →別の話ですがこっそりside:S(特殊設定込み)


[title:リライト]