せをむけてはいけません
※パラレル、幼馴染。








あれ?と臨也は自分の指を見て思った。
指輪が足りない。

「んー?どこにやったのかな?」

記憶を辿り、昨日の夜はあったはずだと確認する。
だがその後、帰ってきた静雄の相手をした後の記憶があいまいだった。
抵抗空しく指輪を外す暇すら与えられずに貪られて、気付けばもう翌朝だったのだ。
指に齧られた痕があるので指輪の行方はなんとなくは察せられるが、はて、どの時点で失くしたのか。

「んー…?」

ベッドの上にないことはシーツを引き剥がしたばかりなのでわかっている。
ということは下か?と当たりをつけてしゃがみ込むが見当たらなかった。

「ベッドの下とか?」

呟きながら臨也は姿勢を低くして隙間を覗き込むが暗くてよく分からない。
仕方ないベッドをずらすかと立ち上がろうとした時、ふわりと香るシャンプーの匂いがしてその背にのしっと重みが圧し掛かった。

「うわっ、シズちゃん何してんの!?」
「手前こそ何してんだ」
「いやいいから退いて。重いし痛いし潰れるよ俺」
「潰れろ」
「うぎゃっ」

ぐっと体重が掛けられて本気で耐え切れなくて敢え無く潰れる。

「酷いよ…シズちゃん」
「うるせぇよ。で、何してたんだ?」
「君ってホント人の話聞かないよね。とりあえず退いてよ」

静雄はのそりと起き上がり、その下から這い出してきた臨也を捕まえた。
そのまま背中から抱き込んで拘束する。
シャワーを浴びたばかりでまだ何も着ていなかったのか、素肌が腕に触れた。

「何すんのさ」
「うるせぇ。で?」

隠す理由もないので、しつこい静雄にうんざりしたまま臨也は答える。

「指輪」
「あ?」
「俺の指輪!シズちゃん昨日外したよね?」
「ああ」

なるほどなと呟かれて、何故か首筋に唇が寄せられる。

「ちょっ、何する気!?」
「さあ、何だと思う?」
「放してシズちゃん!嫌だ、今日は絶対しないよ!」
「うるせぇ」
「…ぃ……ッ」

本日三度目の言葉と共に、血が滲むほど強く首筋を噛まれ臨也は唇をかんで声を耐えた。
その間に何故か指先を弄られ、何かが通される。
「そ、れ…ッ」
「手前のだろ」
悪びれる様子もなくそう言いながら押し倒してくる相手を、臨也はきつく睨んだ。
だが今更この体勢で臨也に静雄を止められるはずもない。
シャツの下に差し込まれた手が素肌を刺激していくのに息を乱しながら、臨也は自分の手を広げてみる。
広げた手、その人差し指には定位置に戻った銀色のリング。

―なるほど道理で見つからないわけだ。

ぼんやりそう思いながら、臨也は昨夜同様油断していた自分のうかつさを呪った。












※無防備に背中を向けていると襲われます。


[title:リライト]