肝試し?のあとのこと 寝た後編
※小話。前回拍手『ちょっとした肝試し?』の続き。寝た後編(正確には布団に入った後)。









重い。苦しい。
鬱陶しい。
うううと唸った臨也は、自分を抱き枕よろしく抱きしめる男を睨みつけた。

「シズちゃんホントいい加減にして」

尖った声でそう言っても、相手はいやだと首を振るだけで、ますます臨也の視線は険しくなる。

「もうホント、たかが幽霊くらいで怖がらないでよ」
「手前は、怖くねぇのかよ」
「怖いわけないだろ。この世で一番怖いのは、生きてる人間だよ」
「…俺は、さっき見たのの方が怖ぇ」

ぽつりと零される弱音は真剣で。
本心だと容易に分かるその音に、臨也はふうと息を吐いて力を抜いた。
あまりに本気で怖がっている姿にに、馬鹿だねぇシズちゃんは、と苦笑が漏れる。
「仕方ないなぁ君は」と口にした臨也は、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる腕を軽く撫でた。

「シズちゃん、なんならどれだけ生きてる人間が怖いか話して聞かせようか?」
「…いらねぇ」

ふるふると首を振って静雄は臨也の首筋に顔を埋めてくる。
そうして、はふと息を吐き出して、呟くように言った。

「俺だって普段はそんなの怖くねぇよ。でも、手前だってもし…本物見たら、やっぱ怖ぇだろ…」
「…わからないなぁ」
「………鈍いんじゃねぇかノミ蟲」
「そういうこと言うと外放り出すよ」
「………」

脅しが功を奏し…いや、腕の力が強くなったので微妙に失敗だったのかもしれないが。
とにかく、静雄はそれ以上文句を言うこともなく、臨也に密着した体勢のまま、悪かったと低く呟くように言う。
そのぷるぷると震える体に、ああもうどうしようもない、と苦笑して。
臨也は間違えて抱きつぶさないでよね、と文句にしては柔らかな声でそう口にした。



もっとも、彼はこのあと魘された静雄に何度も潰されそうになって、この時一緒に寝るのを許してしまったことを大いに後悔することになるのだが。
そんなこと、この時点では知りようもないことだった。












※幽霊怖ぇって臨也に抱きつくシズちゃんが書きたかっただけです…面白く出来なくてすみませんでした…

(mobile版拍手お礼その32 11.05.29初出)