ディープキス
『ほっぺにちゅう』の続きでシズ→(←)イザ。









「ええ、と…シズちゃん?」

前回(と言っても一週間は前だ)ノミ蟲を捕まえた時と同じように宙づりにして。
俺はじっと相手を観察していた。
先週は臨也の行動で不覚をとったが、今回はそんなへまをする気はない。

「シズちゃん、この前も思ったんだけどさぁ…何でいちいち俺を吊り上げるのさ。あ、まさか自分の方が背が高いって優越感に浸ってるとかじゃないよね?」
「………」

うぜぇな。そう思うが、こっちもいちいち挑発に乗ってやる気はねぇから、無視した。ぺらぺら喋って俺を怒らそうって魂胆が見え見えなノミ蟲は、乗ってこない俺に不審そうな顔をする。

「…しずちゃん?」

息が苦しいのか、少し赤らんだ顔。
絞め殺すつもりはないから、とりあえず、手は離さないまま地面に下ろしてやれば、無駄に整ったきれいな顔に浮かぶのは戸惑いの表情で。
そのどこか稚さの残る表情に、俺はクソっと内心舌打ちした。

「どうしたのシズちゃん?この前から何か変だよ?」

ああそうだな。確かに変なんだよ。そんなの知ってる。
手前が、手が触れそうになる度見せる僅かな表情の変化が気にかかって、ついあんなこと訊いちまって。それで、手前が何をトチ狂ったのかあんなことして。

「手前が悪い」
「は――?」

そうだ。こいつが悪い。
今はきょとんと俺を見上げる赤い瞳に、苛立ちとは違う感情を覚えることにあれで気付いた。自覚させたのは、こいつなのだ。
だから。

「手前が悪いんだから、責任とりやがれ」
「いや、意味わかんな――ッ!?」

俺の苛立ちを煽る煩わしい口を塞いで。
開いたままなのをいいことに、舌を差し込んで。
欲望の赴くまま、気が済むまで貪る。

「っ…ふ、…ん……ぅ」

舌を絡めとって嬲りながら、ふと見た臨也の腕には僅かに鳥肌が立っていた。
俺を制そうとしていた手は小刻みに震えて、まるで縋るようになってしまっている。
…やっぱり触られるの、嫌いなんじゃねぇかよ。
あの後、新羅にも確認を取って既に知ってはいたが、なんとなくムカつく。他の連中はともかく俺には慣らさねぇと、これから先困るんだよ。もう俺は手前を逃がす気はないんだからなあ?

「…っ、は…っ…な、に…すんだよ」
「キス?」
「そ、んなこと、聞いてない!」

息を切れさせながら、それでもぎゃあぎゃあ文句を言うノミ蟲に笑う。
いつの間に惚れてしまったのか、考えると頭が痛いが、余裕がない時のこいつは結構可愛いと思う。たぶん。

「手前、やっぱり触られんの嫌いなんだな」
「…ッ…だったら、どうだっていうんだッ」

毛を逆立てた猫みたいだなと思いながら、俺を睨む臨也の腰に腕を回して、代わりに掴んでいた胸倉は解放してやる。
腕に囲われる形になった臨也はヒクッと喉を震わせて、睨む視線をキツくした。

「ッ…触るなよ!」
「嫌だ」

臨也のこれはそれほど酷くはないと新羅は言っていた。時間をかけて慣らしていけば、あるいは治るかもしれないとも。

「手前、腰細いな」
「なにそのセクハラ発言!?」
「いや、悪くねぇけど…もう少し肉付けねぇと抱き心地悪い」
「いやいやいや!抱き心地ってなに!?っていうか、何でこんなことになってんの!?」

細腰を撫で上げれば、もうほとんど涙目で臨也が叫ぶ。

「手前が悪い」
「だからそれ意味分からないから!」
「臨也」
「何!?何なのっ?これ何の嫌がらせ!?」
「嫌がらせなんかするかよ、お前じゃあるまいし」
「ちょっ、真顔で言うこと?!この状況で!!」

とりあえず離せとか、ちゃんと説明しろとか。
そんなことをごちゃごちゃ言っているが、全部無視だ。
うるせぇ、少し黙っとけ。
そう思いながら、俺はもう一度臨也の唇に噛みつくようにキスをした。










※セクハラシズちゃんと被害者臨也さん(違)
落とし所が見つかりませんでした…。


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