※小話。ネタとしてはシズイザだけど臨也いないです。









ふわりと漂う甘い香りに。静雄はくんと鼻を鳴らした。
香りの先を探して、辺りを見回すが、あるはずの姿はない。

「…?」

首を傾げて眉を寄せた静雄に、トムが声をかけてきた。

「どうした、静雄?」
「あー…ちょっとすっげぇ知ってる匂いが…いえ、なんでもないっす」

フルフルと首を振ってまたキョロキョロと見回すが、やはり探す人物の姿は見えない。
「…なんだってんだ…」
ぽつりと呟いて、溜息。
「あー…落ち着け静雄。イライラしてても物に八つ当たりはいけないぞ…?」
指摘されて手元を見れば、ぐんにゃりと曲がった標識。あー…またやっちまった…と呻いて、手を離す。
「…すみません」
謝れば、「いや構わねぇけどよ」と苦い笑みを浮かべつつ返してくれるトムにもう一度謝って、静雄はふうと息を吐いた。

「…しかし、なんであの野郎の匂いがしやがるんだ…」

ムカつくと唸る静雄に、トムが少し引きつり気味の笑みで言う。
「そういや、静雄。お前シャンプー変えたのか?」
「…は?」
話題を転換すべく口にされたその言葉に。
そこでようやく静雄は自分が動くたびに香る甘い匂いに気付いた。

「………あー、そうっすね。変えたというかなんというか」

返答に困って言葉を濁し。静雄は舌打ちして空を見上げる。
指摘されて気付けば、なんということもない。
つまり、よく知った甘い匂いは自分の髪からしていたわけだ。

「…くそ」

ムカつくから今夜も襲撃してやろうと考えて、静雄はふんと鼻を鳴らして目を眇めた。












※ありがちシャンプーネタ。

(mobile版拍手お礼その33 11.05.29初出)