※シズイザ小話。衣装交換。









むう、と眉間に皺を寄せた臨也に。
静雄はくすくすと笑って、コートを羽織った。
サイズの合わないそれはきついが、細身なので着れないこともない。

「ちょっとこれってどういうこと」

ずいっと差し出される臨也の手は、シャツの袖が余って隠れてしまっている。
ついでに言えば、ズボンも同様。
身長差やその他諸々。臨也が着るには大きいバーテン服を、着るというよりは羽織るような形になった彼は酷く不機嫌そうであった。

「ん、なんつーか」
「何?」
「予想通り?」
「死ね!」

ポケットに手を突っ込んでナイフを投げようとして。
そのポケットがないことにようやく気付く臨也を笑って、静雄は手を伸ばしてその細身を抱き寄せる。
香るのは煙草と、自身のそれと…臨也のそれが交じり合った複雑な匂い。

――だが、悪くない。

くすりと笑って、全身を静雄の香りで包まれた臨也を抱き締めた。
ますます眉間の皺を深くする相手の額に、目元に、頬に、キスを落とすと、不満げに歪められた口から溜息が漏れる。

「シズちゃんってそういう格好なんか似合わないねぇ」
「手前のくせぇ匂いがプンプンして胸糞悪いしな」
「…やっぱ死ねよ」

無理やり交換させたくせにと唸る彼は、抱きつくような格好で静雄が羽織った自分のコートからナイフを取り出そうと躍起になっている。
それを腕の力を強めることで軽々と封じて。
静雄は離せこの馬鹿力と喚く臨也の首筋に鼻を埋めた。
混ざる匂いは、まるで臨也が自分のものだという証明のようで。
静雄はくつりと笑って、やっぱ悪くねぇなと呟くのだった。












※匂いでもマーキングしたい静雄さん。服交換させた意味があまりないのが心残り…。

(mobile版拍手お礼その27 11.02.28初出)