※シズイザ小話。









ぱきん、と小さな音。
波江の足元でしたその音に、二人は「あ」と同時に声を上げた。
足元の音の正体。それは、先程から臨也が探していたコンタクトレンズだった。








臨也は、実は目が悪い。
眼鏡では動き回るのに不都合なので、普段はコンタクトをしている。
よって、臨也が眼鏡をかけているのを見たことがある人間は限られていた。

「………」
「………」
「…………」
「…………」

沈黙が続く。
そのままさらに5分。
じっと、ただひたすらに凝視される状況に。
臨也はついに耐えかねて相手を睨み付けた。

「シズちゃんいい加減にしてくれないかな」
「…別に何もしてねぇじゃねぇか」
「視線が鬱陶しいって言ってるんだよ!なに?なんなの?言いたいことがあるならはっきり言えばいいだろ!?」

最後の方は苛立ち任せに怒鳴るような声になったが、それに対し、静雄は数回瞬いただけだ。
それから、僅かに何か考える仕草をして口を開く。

「じゃあ言うけどよ」
「何かな」
「手前と眼鏡の組み合わせってよぉ…なんつーか、エロい」
「はあ!?」

なにそれ何なの!?こいつ何言っちゃってんの!?
ガタがタッと大きな音を立てて座っていた椅子から立ち上がり、臨也は本能が鳴らす警鐘に従って後退りする。が、あっさり伸ばされた手に捕獲されて徒労に終わった。

「逃げんな。別に何もしやしねぇよ」
「嘘だ嘘だ嘘だ。この状況でシズちゃんが何もしないとか、絶対あり得ない」
「…手前、襲うぞ」
「嫌だっ。俺まだ仕事残ってるし、今日はしないって言ったよね!?」
「おう、覚えてるから安心しろ」

ぎゅうぎゅうと逃げられないように抱き締められている状況で、どう安心しろと言うのだ。
臨也は静雄を刺激しないようにじっと体を強ばらせたまま動かずに――動けずに、とも言うが――いるしかなくて。
そんな臨也に満足したのか、静雄はその頬にキスを落として、それから、言った。

「何もしねぇから、代わりに写真撮らせろ」



――それ、一体何に使う気ですか!?












※普段と違うのも萌えるよねという話。

なんか頂いたネタ部分は最初の3行で終わるという大変申し訳ない事態に…(しかもオチがあんなとか)
ネタ提供ありがとうございました!

(mobile版拍手お礼その25 10.11.30初出)