このこどこのこ?
※シズイザで隠し子疑惑。









「シズちゃんこれどういうことだよ!」

そう言って、ずいっと目の前に突き出された物体――もとい子供に。
静雄は、は?と首を傾げた。
どこかで見覚えのある子供だ。だが、どこだったか、と考えるが思い出せない。

「…?」
首をさらに捻る静雄に、臨也は憤慨し。
困ったように臨也の顔を見上げる子供を下に下ろし、捲くし立てた。

「なに俺は何にも知りませんって顔してるのさ!これ、どう考えてもシズちゃんの子供だろ!?」
「…は?」

そんなことを言われても身に覚えがない。――何しろ、静雄は臨也以外と付き合ったことはないし、そういう行為もしたことがないのだ。
だが。

「…あー…言われてみれば似てるかも…?」
「似てるなんてもんじゃないよ!どう考えてもシズちゃんそっくりだよこの子!」

臨也の指摘通り。確かにウロウロと大人二人の間で視線を彷徨わせる子供は静雄によく似ていた。
…というか、子供時代の静雄(ただし本人も写真でしか見た覚えがない頃)に瓜二つである。

「…って言うかよ、何で手前が俺の小さい頃知ってんだよ」
「そんなの写真持ってるからに決まってるだろ!」
「………」

きっぱり何の躊躇もなく言い切られて、静雄は一瞬黙る。
正直、その写真の出所が気になるところである。
そんな小さな頃の写真を臨也の知り合いが持っているとは思えない。
だが、それは今問い質すべきことではないだろう。
はあ、と溜息をついて色めき立つ相手を真っ直ぐ見て――。

「…なぁ、臨也」
「なに!?言い訳なら聞きたくないよ!?」

口を開いた直後にそう言われて頭痛を覚えた。
ここまで臨也が怒っていると、どうやら逆に自分は冷静になれるらしい。
そう考えて、静雄はさらに深く溜息をつく。

「…少し落ち着け。そのガキが俺とそっくりなのは置いておくとしてだ、何で手前がそいつを連れてるのかが気になるんだよ俺は」
って言うか、それ抱えて走ってきたのかよ。
「……そうだけど……あ」

どうやら漸く冷静になったらしい。
臨也は目を瞬かせて、うわ、やっちゃったよ…と呆然と呟いた。

「どうしよう…絶対噂になるって…」
「…あー…まあ、それも置いておいて」
「置くの!?結構大問題だよ!?」
「手前に隠し子疑惑が沸こうがどうでもいいんだけどな」
「酷くないそれ?」
「うるせぇ。で、そいつ、何で手前が連れてんだ?」
「…玄関っていうかエントランスに置いてあったダンボールに入ってたからだけど?」
「…………」

そんなもん開けるな。爆発物とか入ってたらどうする気だ。
ぼんやりとそんな感想が頭の隅を過ぎる。
ちら、と見た先の子供は、まだ状況を把握できていないのか、大人しい。

「でさぁ、シズちゃん?言い訳は聞きたくないけど、まあしょうがないから一応聞いてあげるからさ。だから、さっさと白状してくれない?」
「白状って…何をだよ…」
「ッ…この子君の隠し子だろ!?」
「!?んな訳あるか!!」

そこで、静雄はそう言えばさっき否定し忘れていたことを思い出した。
どうやら誤解は――当たり前だが――全然解けていなかったようだ。

「俺は手前以外と付き合ってことねぇよッ」
「でもこの子絶対シズちゃんの子供だよ!?ほらこの目つきの悪さとか――」



ぎゃんぎゃん叫ぶ臨也に静雄がキレるまであと少し。
その後、臨也の剣幕になかなか口を挟めなかったちびシズ(仮)が、自分は「へいわじましずお」だと言い出して別な問題に発展するのだが。
そんなこと、この時の彼らには知る由もないことだった。








なお、臨也の危惧した隠し子疑惑は、どこをどう間違った結果か知らないが、平和島静雄と折原臨也の間の隠し子などという噂にまで発展する。
が。
当然それも、この時の彼らには予想もできないことであった。












※ちびシズ騒動勃発。でも続きません。

書き終わってから臨也が騒いでるだけだよコレ、とか思いましたが…まあ、いいか。(いいのか?)
ネタ提供して下さった方、ありがとうございました!
(mobile版拍手お礼その20 10.10.27初出)