※シズイザ。甘いです。









ふわりと漂う香りに。
臨也は「ん」と小さく声を出し、その匂いに擦り寄る。
寄りかかって密着した背中が暖かい。
そのまま、またうとうとし始めると、唇にちょんと柔らかいものが当たった。

「なに…?」

眠気を堪えて、薄く目を開けて問う。
すると、キスを仕掛けた張本人――静雄が、「なんでもねぇよ」と返してきた。
そう、と呟いて眠い目を擦って見上げると、物言いたげな茶色の目と視線が合う。

「なんでもなくないよね」
「なんでもねぇ」

そう言って煙草を銜え直す静雄の耳は、赤い。
ああ、照れてるのか。と、自分の行動に赤面する男に苦笑する。
どうやら無意識の行動であったらしいと判断し、臨也は何度か納得したように頷いた。

「可愛いなぁ、シズちゃん」
「うるせぇ」

恨めしげな声と表情で黙れと言う静雄だが、真っ赤なままでは効果はないに等しい。
臨也は甚く満足そうに笑んで、
「シズちゃん、もう一回キスしてよ」
と強請る。
一瞬何を言われたのか分からなかったのか呆けた静雄だったが、すぐに、仕方ねぇなと言いながら灰皿にまだ長い煙草を押し付けて、揉み消した。

「一回でいいのかよ?」

耳元を擽るように、唇を近づけて問われて。
臨也は「じゃあたくさん」と答えて。
それに応じるように降らされるキスの雨に、満足そうに目を細めたのだった。












※甘やかして、甘やかされる話。

キスの話で甘いものを、とのことだったので書いていたらこうなりました。
ネタ提供して下さった方、ありがとうございました!
(mobile版拍手お礼その18 10.10.27初出)