好悪が逆転する薬を飲ませてみた 静雄編
※普通にお互いが嫌いな二人。小話。









「臨也、好きだ。結婚してくれ」
「はい?」

仕事帰りにばったり静雄と会ってしまった臨也は攻撃を予想して身構えたが。
その言葉に、間抜けな顔を晒すことになった。





「新羅、これどういうこと?」

第一声での告白のあと、臨也が急いで静雄を引っ張っていったのは新羅のマンションだった。
原因はこの相手以外に思い浮かばなかったのだ。

「ああ、成功みたいだね」
「新羅?」
「うん。さっき静雄がうちに来てね。その時に薬を盛ったんだ」
「あ"ぁ?手前何か飲ませやがったのか?」
「あああごめんなさい許してください首絞まるから離してくださいお願いしますっ」
「ふん」

謝罪されたことで静雄は新羅の首を絞めていた手を離し、また臨也の隣に座る。
それを横目で見つつ、臨也は大きく溜息をついて新羅に説明を求めた。

「静雄に飲ませたのは好悪が逆転する薬――つまり、嫌いなものを好きになって好きなものを嫌いになる薬なんだよ。で、今静雄は臨也が好きになってるわけ」
「あ?俺が臨也を好きなのは薬のせいじゃねぇぞ?」
「いや、薬のせいだよ。シズちゃんいつも俺のこと嫌いだ殺すって言ってるじゃん」
「だよねぇ」

お互い心底嫌い合っていることはよくわかっている。

「ていうか、君がこれを利用しないなんてね」

意外だと口にする新羅を睨み、臨也は首を振った。

「これ気持ち悪すぎ。利用云々より側にいるだけで鳥肌立って耐え難い」
「えー…そう?」
「そう。だからさっさと元に戻してよ」
「無理だよ」
「は?」
「だから、無理。解毒剤なんてないから、効果が切れるまではそのまま」
「………冗談だろ?」
「至って本気だよ」

ちらりと横の男に視線を走らせると、嬉しそうな笑みで応えてくる。
冗談だろ。これがまだ続くのかよ。
そう思って青くなる臨也に、追い打ちの言葉が新羅と静雄双方からかけられる。

「たぶんあと1日か2日はこのままだね」
「臨也、俺が手前を好きなのは薬のせいじゃねぇぞ」
「あ、はははは…」

ホント、冗談だろ?
好きだ、と臆面もなく繰り返す静雄と、にこにこ笑っていや平和だねぇなどと言っている新羅に、臨也は心の底から絶望した。
拷問かと思えるほど精神的にキツい。それが最低1日は続くなど、臨也の精神が耐えられるはずがない。

「…新羅、後で覚えてろよ」

そっと静雄に手を握られて鳥肌を立てながら。
臨也は小さく呪いの言葉を吐き出した。












※もう一個あったり…。

新羅「え?ネタがベタ過ぎて面白くないって?じゃあ――」
静雄&臨也「「もうやめろ!」」
(mobile版拍手お礼その15 10.09.13初出)