夏の話 にこめ
※シズイザ小ネタ。ぐだぐだでオチすらないです。









日本の夏のじめじめとした暑さは最悪である。
そう臨也は常々考えていた。
この時ばかりは人間観察が日課と言って過言でない臨也もあまり出歩かなくなる。
ごった返す街中を歩きたいなどとは思えない。
だというのに。

「なんで俺外にいるのかなぁ」

見上げた空は見事な快晴だ。
じりじりとアスファルトを焦がし照り返す太陽の熱が、臨也の肉体だけでなく精神までも消耗させていく。
気温は35℃を越えたところで確認するのをやめた。
もう限界。無理。
はあ、と溜息をついて、タイミング良く見えてきたコンビニに入ることにした。
が、すぐに引き返そうと思うことになる。
くるりと身体を反転させて、扉を開こうとして――

「シズちゃん、掴まないでよ服伸びるから。これお気に入りなんだよ」

コートのフードを掴まれて、逃走は阻止された。
暑くて争う気力もないというのに、厄介なのに見つかってしまったものだ。
困ったなぁと内心思いながらも、振り返る。

「なんでシズちゃんがいるの」
「手前こそ、なんで池袋にいやがる」
「仕事だよ。じゃなかったら絶対マンションから出なかった」
「…ずいぶんバテてるじぇねぇか」
「俺はシズちゃんと違って普通の人間だからね。この暑さじゃ辛いんだよ」
「だったらコート脱げ」
「やだ」
「………」

溜息をつかれる。
失礼な奴め。そう思いながら、もう一度離してよと訴えれば。
今度は意外にも素直に手が離された。

「じゃ、俺帰るから――」

これ幸いと臨也はそのまま歩きだそうとして、またしても捕獲される。
いったい、なんだというのだ。

「シズちゃんなにがしたいの君」

じろりと振り返った先の相手は、思案気な表情で臨也を見下ろしている。
しばし黙考してから、静雄は静かに口を開いた。

「俺としてはよぉ」
「うん?」
「手前が熱さでぶっ倒れようとなにしようと関係ないんだけどな」
「はあ…」
「とりあえずその辺で死ぬと人様の迷惑だからここにいろ」
「…なにそれ」

まさか心配されてたりするわけ?
わずかに首を傾げて、次の瞬間には思いっきり否定する。
いやないない。ないったらない。

「なんで命令されなきゃなんないの。っていうか、ここコンビニだし、君の家じゃないんだからここにいろとか言われても困るし。そもそも俺、今年はまだ熱中症になった覚えないし君の前で倒れた覚えもないんだけど」
「うぜぇ…」

心底うんざりという顔をした静雄だが、それでも今度は手が離されることはなく。
臨也は引き摺られて雑誌コーナーに強制連行され。
何なんだこの状況は、と思いながら天敵の隣で涼をとることとなった。












※途中で収拾がつかなくなったので強制終了。
(mobile版拍手お礼その13 10.08.13初出)