夏の話 いっこめ
※シズイザ小話。またしてもありがちネタです。暑い。とにかく暑い。
じめじめと纏わり付くような熱気に、臨也はすでになにもする気がなくなっていた。
現在気温は35℃。
いい加減にしろよ夏、と意味不明な言葉を零して。
ころりと床に転がる。
「シズちゃん、あいすー」
そのまま要求すると、呆れたような溜息が聞こえた。
「それくらい自分でとれ」
そう言いながらも、元から台所にいた静雄は冷凍庫を開ける。
適当にアイスを手に取った彼が臨也のそばに来て、ほらと差し出してきた。
「ありがと」
もそもそと起き上がって、細長いアイスキャンディーを受け取る。
ぱくりと口に入れて、その冷たさに満足げに目を細めて。
臨也は静雄にシズちゃんは「食べないの?」と訊いた。
「いや、今はいい」
首を振った静雄にふうんと呟いて、臨也はそれ以上気にすることもなくアイスに集中する。
冷たくておいしい。
なくなるのがもったいなくて舐めていると、また溜息。
「手前なぁ」
「うん?」
あーなんでもねぇ、と唸るように言う静雄に首を傾げる。
一体なんだと言うのだ。
そう思ってじっと見つめていると、たらりと溶けたアイスが手を伝った。
手がべとつくのが嫌でそれを舐めとる。
と、その手を取られた。
「…エロいんだよ手前」
はい?
意味が分からず首を傾げる臨也に。
静雄が忌々しそうに言う。
「ひとがせっかくミルクバー以外を選択したってのにまるっきり無駄じゃねぇか」
「なにそれ」
――意味分からないよ。あ、いや意味は分かったけど。
シズちゃん思春期のガキじゃないんだからさぁ、と思わないでもないが、臨也は呆れた視線を送っておくだけにした。
「臨也、それ食ったらお前もう帰れ」
「はあ?なんで?」
「うるせぇ。我慢してやってんだから、帰れ」
「…ばっかじゃないの」
別にアイスの食べ方は意図したものではないけれど。
だからと言って、するのが嫌だとは言っていないのに。
暑い中で熱くなることをするのもばかばかしいが、いっそ夏の暑さを感じられなくなるほどの熱に満たされるのも悪くない。
くつりと笑って、臨也は口の中のアイスを噛み砕きながら。
どう静雄を誘おうか考えることにした。
※かき氷ネタを考え中に夏休み中の学生さんたちが棒アイス片手に歩いて行ったのでこうなりました。あれ?おかしい…。
(mobile版拍手お礼その12 10.08.13初出)