苦手なものの話 静雄編
※シズイザ小話。「…っ」
「シズちゃん、でかい図体で抱きつかれると鬱陶しいんですけど」
「あ、わ、悪ぃ」
そろそろと離される手。
しかし、「ひっ」と小さく息を飲んで、またすぐしがみついてくる。
「…シズちゃん、そんなに嫌なら見なきゃいいんじゃないの?」
「…途中でやめたら、余計な想像して怖いんだよ」
そうですか。
ありがちな心理だ、と溜息をついて俺は視線をテレビに戻した。
夏の風物詩といってもいいかもしれない心霊特集にシズちゃんの目は釘付けだ。つけっぱなしにしておいた俺が悪いんだけど、正直な話、場面が何か出てきそうな雰囲気になったりするたびに無意識なのか反射なのかは知らないがしがみついてくるので鬱陶しい。力加減がいまいちで痛いし。
しかし――
「なんで現実では平気なのにこういうのは怖いわけ?」
まったくもって疑問だ。
妖刀とか首なしライダーは平気なのに(たぶん現実に幽霊がいたとしてもシズちゃんは平気だと思う)、たかがテレビ番組の何が怖いんだろうか。ああ、そう言えばこの前借りたというホラーゲームを持って来たときも結局俺にやらせてたっけ。自分は俺の後ろで、やたら背後を気にしながら見てるだけだったよね。
「…こういういかにもって感じの演出されるのが嫌なんだよ。怖ぇじゃねぇか」
「ああそう」
そういうものなのか。と納得いかない気分で、俺はまた強くなった腕の力に溜息をついて、「離して」と言うのだった。
※作りもののホラーは怖いシズちゃんの話。
ないなと思いつつも、つい。いや、シズちゃんがこういうので怖がったらなんかかわいくないですか…?…ないか。
(mobile版拍手お礼その11 10.08.13初出)