苦手なものの話 にこめ
※シズイザ小話。









ひっと引き攣った声を上げて抱きついてきた臨也に。
俺は仕方ねぇなぁと溜息をついて、その細身を抱き返してやった。
外ではゴロゴロと音がしている。

「情けねぇなぁ、臨也くんよぉ」
「煩いシズちゃん。黙っててよ」

憎まれ口を叩くが。
顔を俺の胸に埋めて小さく震え続けるその姿を見れば、いつもなら聞いた瞬間に殴りたくなるその声もかわいいだけだ。
ピカッとまた光った空に大げさなほど跳ね上がる背を宥めるように撫でてやる。

「っ…も、ホントさいあくっ」
「…手前な」

なんでアレが怖いのか俺には理解できない。
そりゃ、自分の側に落ちるとすれば危険だし怖いかもしれないが相当遠くの方で鳴ってるだけの雷でも怖いとか、全然理解できないんだよなぁ。
しかし…。
憐れなほど震え続ける臨也を見ているとどうにかしてやりたいと思ってしまうのだから、俺も相当こいつに甘い。
まあ、空を見てこれは来るなと思ってわざわざ新宿まで来た時点で甘すぎるのは分かってるんだが。

「臨也、顔上げろ」
「やだ。絶対やだ」

外を見ないように小さくふるふる顔を振るのに溜息をついて。

「いいからこっち見ろ」

顎をすくって顔を上げさせる。
涙ぐんで赤い目元が、なんというか…扇情的だ。
いつもこうやってしおらしくしてりゃいいのに、と思いつつ唇を寄せる。

「しずちゃん?」
「黙ってろよ」

雷なんか忘れさせてやるから。
そう囁いて、口付ける。
歯列を割って、口内を舌で弄って。
雷など意識できなくなるように、深く深く口付けて快楽を引き出してやる。

「っ、ふ…ぅ」

くたりと完全に臨也の身体の力が抜けるまで貪ってから。
ぴちゃりと唇に舌を這わしてから開放すれば、潤んだ目と視線が合った。

「雷、忘れられただろ?」
「…忘れ…られたけど、なんか…嬉しく、ないなぁ…」

は、と息を吐き出して応じる顔はすっかり紅潮している。
外でまた空に光が走って、一瞬強張って臨也が腕に縋ってきた。

「まだ雷、鳴ってるし…」
「止むまで付き合ってやろうか?」

にやりと笑って訊けば、ずるいと睨まれる。
だが、すぐに諦めたように素直に首に腕を回してくる臨也に。
俺は、雷の時の臨也は素直で扱いやすくてかわいいんだよなぁと内心ほくそ笑んだ。

ずるくてもいいんだよ。利用できるもの利用すべきだ。そうだろう?












※確信犯な静雄さん。
恐怖症や嫌悪症の類は自分の意思じゃどうにもならないから困りますよね。
しかしホント何番煎じ何だって感じの小話ですみませんでした!
(mobile版拍手お礼その8 10.07.31初出)