「何でだろうなぁ……最近あいつが美味しそうに見える……」
※お題『組込課題・台詞』より。シズイザ小話。付き合い始めてすぐくらい。










「シズちゃん」
「なんだ」
「いつまで見てる気?」

ぎろりと睨まれて、静雄は「別にいいじゃねぇか」と呟いた。
いや良くないと思うよ。
そう思ったが口には出さず、新羅はカップを持ってセルティの隣に座る。

「新羅、これどっかやってよ」
「いや、そんな無理難題ふっかけられても困るんだけど」
『静雄、プリンならまだあるぞ?』
「あー…いや、」

そうじゃねぇと首を振る静雄に、セルティは首を傾げてさらに文字を打った。

『なら、臨也が何かしたのか?』
「そこで俺が悪いって決め付けるのもどうかと思うよ、運び屋」
『たいがいのことはお前が悪い』
「………」

むっつりと黙り込んだ臨也は手にプリンをすくって口に運ぶ。
その口に。

ぺろり。

「ッ!!?」
「何してるんだい静雄!!」
『し、静雄!?』

硬直する臨也と衝撃的な光景に叫んだ新羅と驚愕にPDAを取り落としそうになったセルティと。
三者三様の反応にとくに何を言うでもなく、静雄は満足げに自分の口を舐める。
そして一言。

「甘いな」

と言って口元を緩めた。

「そ、りゃ、プリン食べてるからね…」

あまりに唐突に予想外な行動をされて、臨也はそう返すのがやっとだ。
唖然としたままの臨也にくっと笑って、静雄はその頭を軽く撫でる。

「嫌だったか?」
「別に、ヤじゃないけど…」
「ならいいだろうが」
「…うん…?」

いまいち納得のいかない表情でいると、また、口元をぺろりと舐められる。

「シズちゃん、俺…食べ物じゃないよ?」

そう控えめな申告をした臨也に、やっと我に返った二人が首を振った。

(そうじゃない!!そうじゃない臨也!!)

静雄の意図は明らかだ。
それが分かってしまった二人はまるで気付いていない臨也に痛ましげな視線を向ける。
いくら性格が悪い相手でも、こうもあからさまに狙われているこの状況ではそうしたくもなる。

「シズちゃん、邪魔」

ぎゅうと押しのけられて、静雄は渋々と言った様子で離れた。
「コーヒー勝手に飲むよ」と席を立った臨也を視線で追いつつ、呟く。


「何でだろうなぁ、最近やけにあいつが美味しそうに見えるんだよ」


そう言った静雄の目に冗談の色は欠片もなかった。












※おいしく食べられるまでカウントダウンです。
(mobile版拍手お礼その5 10.07.13初出)


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