お父さんは過保護です。
※来神組で高校時代。シズ→イザな小話。










「ドタチン!」

半分涙目になりながら体当たりするように抱きついてきた臨也を咄嗟に抱きとめて。
門田は首を傾げた。

「どうしたんだ」
「あのねっ、しずちゃんがね」
「静雄がどうした?」
「シズちゃんが俺にセクハラするんだよ!」

…………。


よし。とりあえず。
バタバタと大きな足音を立ててやって来たばかりの静雄に視線を向ける。

「静雄、お前一発殴らせろ」

話はそれから聞いてやる。
そう言えば、目を瞬かせて静雄が怪訝そうな表情をした。
臨也はといえば、助けてドタチン!と背に隠れてしまっている。

「あはは、さすが門田くん。臨也がなつくわけだね」

続いて現れた新羅がそう言って、「まあ一発殴られておきなよ」と静雄の背を叩いた。

「なんで門田に殴られなきゃいけねぇんだよ…」
「そりゃ、門田くんは臨也のお父さんみたいなものだからね」
「…は?」

なんだそれと固まる静雄に笑って、新羅は更に背を押す。

「ほら、ここはあれだよ。『お父さん、娘さんを僕に下さい!』の場面だよ」
「却下」

一刀両断。
とんでもない発言に静雄が怒鳴る前に、門田はそう口にしていた。
ドタチン大好き〜と背に懐く臨也に静雄が眉間に皺を寄せるが、そんなことはどうでもいい。
重要なのはそこではない。

「…まだ言ってないのに却下されちゃったね、静雄。遺憾千万だろうけど頑張ればまだチャンスはあるよたぶん!」
「岸谷も面白がって煽るな」

溜息混じりにそう言ってやってから、門田は静雄に視線を戻した。
その静雄の視線はといえば、門田の背に隠れたままの臨也に釘づけである。
ああまったく。と呻くように口の中で呟く。

「で?とりあえず殴る前に話を聞いてやってもいいが――」
どうする、と続けようとした言葉は背後の人物に遮られた。
「聞かなくていいよドタチン!いきなりキスしようとする変態なんか相手する必要ないから!」
「………」

憤然とそう叫ぶ臨也に、新羅があーあと額に手をやる。
こうなっては仲裁はまず無理だ。
現に門田は先程までの半分傍観者の姿勢を捨て去り、ごきりと拳を握った手首を鳴らして剣呑な眼差しを静雄に注いでいる。
それからさすがに少したじろいだ静雄に向かって言い放つ。



「…静雄、やっぱり一発殴らせろ」



…こうして、門田VS静雄の構図は完成した。












※not ドタイザ。お父さんは過保護です。(大事なことなので二度言います)
(mobile版拍手お礼その3 10.07.02初出)