step on the scales !
※同居パラレル設定。一度はやりたい体重計ネタ。









「………」
体重計を睨み付けて微動だにしない臨也に。
静雄は僅かに首を傾げたまま、声をかけるために口を開いた。が、何度目かになるその動きは、今回もあまりに真剣な臨也の横顔に阻まれる。
一体なんだというのか。同居し始めてだいぶ経つ静雄だが、毎日毎日風呂上りに体重計に乗る臨也の考えなど読めようはずがなかった。――そもそも読む気がなかったといったほうがいいのだが。
だが、それにしてもここ数週間の臨也は変だ。そう静雄は考える。
体重計に乗る前に酷く難しい顔をして数分佇むその姿は、悩んでいるように見えなくもない。

「…あー」
声をかけるべきか。だが、なんと声をかければいいのか。
そう思って、何度も声をかけようとしては断念することを繰り返しているのが静雄の現状だ。
と、臨也がようやく動いた。
すっと足を動かして、体重計に乗る。

………。

「…あああ、もう…やっぱり減っていない」
呟きは小さく、しかし、とても悔しげな響きだった。
「あー…そういうことかよ」
問うまでもなく得られた答えは、なんというか。

「手前な、男の癖になに気にしてんだよ…」
「…ああ、シズちゃんいたの」
「…おい」

気付いてなかったのか、とあきれる静雄に、臨也はふうと息を吐き出した。

「手前は女か。体重なんか気にしてんなよ…」
「んん、あのねぇシズちゃん?俺がどれだけ苦労して体重を維持してるか知ってるの?」
「知るわけねぇだろ」
「だよねぇ。…別にいいけど」
「けど、なんなんだ…?」
「シズちゃんみたいな怪力がない俺には身軽さが重要なの。わかる?」
「あー…」
パルクールってやつか。と考えて、静雄は納得顔で頷く。

「でもよ、手前もう少し太っても問題ねぇと思うぞ?」
「はあ?」
「軽すぎるし、細すぎんだよ。俺がいっぱい食わそうとしてるのに全然食べやしねぇし」
「あ、やっぱりそういうつもりだったわけ!?」
「あ?悪いか?不健康だろうが」
「不健康じゃないし!」

うううと唸って見上げる臨也の乗る体重計は、わずかに増えた程度だ。
それを少しだけ近寄って確認して、静雄はまったくと息を吐いた。

「シズちゃんのせいで俺が悪いやつに捕まったらどうすんのさ」
「…悪いやつって手前のことだろうが」
「……しずちゃんのばーかばーか!」

子供かお前は…と頭が痛い気分になりながら、静雄はもっと食わせねぇとまた倒れるんじゃねぇかと思う。
本人は体重が増えたことを酷く気にしている様子だが、どう考えても確認した体重も触った時の感触も、やせすぎと言っていい。

「…ホント、しかたねぇよな手前は」

そう呟けばぎゃんぎゃんと文句を言う臨也。
それをいなしながら、静雄は臨也の体重を増やすべく明日からの献立を考えるのだった。












※静雄と暮らし始めてから体重増えた…と思う臨也さんともう少し太れと思う静雄さん。