いちごみるく
※シズイザ。タイトルあんまり関係ない。









「………」
甘い香りと、淡いピンクがかった乳白色。
自分のアパートのそれとは比べ物にならない広さのバスルーム。
その浴槽に溜められた湯気が立ち上るそれを眺めて、静雄は首を傾げた。
おいしそうな匂いだな、とのんきに考えて、それからバスルームから出る。

「おい、臨也。あれ、いったい何なんだ」
「ん、なに――って、タオルくらい巻こうよ!?全裸で歩き回るなこの変態!!」
「あー…別にいいだろうが。手前しかいないんだから」
「あのね!そういう問題じゃないから!あああ、いいからなにか着て!!」
「っち、すぐに風呂戻るから喚くんじゃねぇよ…」

心底鬱陶しそうな顔をして、静雄は風呂場の方を指差した。
「で、あれ、なんなんだ?」
問いかけに、臨也は首を傾げ、それからああ、と頷く。

「入浴剤?」
「おう」
「イチゴミルクの香りだってさ。もらったんだけど使う機会がなくてさぁ…あれ?嫌だった?シズちゃん甘いもの好きだしいいかと思ったんだけど」

意外そうな顔をされて、静雄は意味わからねぇ…と内心で呟いた。
「…あれは食べ物じゃねぇだろうが」
と言ってみれば、
「飲んでもいいよ?シズちゃんならおなかも壊さないだろうし」
と笑われる。

「…手前な」
「はいはい、別にいいでしょ?あとで俺も行ってあげるから待ってなよ。ね?」
「…あ…?…お、おう」
「はーい、じゃあ一名様お風呂場にごあんな〜い」

背中を押されてバスルームへ戻った静雄は、
「じゃあ待っててね」
とかわいらしく小首を傾げて言った臨也に頷いて素直にシャワーを浴びて体を洗って風呂に入って。
甘い香りに包まれて、どこか釈然としない気分のまま、臨也を待つことになったのだった。



「…シズちゃんってば単純すぎー」
とけらけら笑う臨也がまさかぼんやりと風呂につかる自分を隠しカメラで観察してるなど、静雄は考え付きもしないのだった。












※盗撮カメラがそこかしこに仕掛けられてる臨也さん宅。