触れる
※シズイザ。意味不明ですみません…。









カチャカチャと響くキーボードを叩く音。
それを聞きながら、静雄は暇だな、と頭の隅で思う。
臨也の部屋で、こうやって待たされるのは別に初めてのことではない。だが、初めてでないからといって暇でないわけではないのだ。
ふうと小さく息を吐き出して立ち上がって。静雄はそっと真剣に仕事をする臨也の背後に近づく。
気付いているだろうに振り返りもしない男は何を考えているのだろうか。
ぼんやりとそう思いつつ、そろりと手を伸ばして、うなじにかかる髪に触れる。さらりと触り心地のいいそれは、指を滑って逃げてしまって。それが、まるで臨也本人みたいだと考えて、小さく笑った。
もう一度摘んで、指先で遊ぶ。
くるくると指に巻きつけて、離せばサラリと落ちるのを感触と目の両方で楽しんだ。

「……」
何をしてるんだ、という視線が途中寄越されるが無視する。
そうして、飽きるまでそれを繰り返したあと、白い首筋に手のひらを這わせ、するりと撫でれば。
「…っ」
ほんの僅か息を呑む音。
じろりと睨まれるが、やはり無視して、そのまま首筋から頬へと撫で上げた。
滑らかな肌の感触にそれも何度か繰り返すと、溜息がつかれる。
だが、触るなとは言ってこない。
それに気をよくして、そっと、うなじに顔を寄せて、軽く口付けを落とす静雄に。
臨也はついに耐えられなくなったのか、くるりと振り返った。

「あのさぁシズちゃん、俺仕事中なんだよね」
「知ってる」

知っているが触っていたくなったのだと告げる静雄に、臨也は一瞬目を丸くして、そして、盛大な溜息を零した。

「…君って時々、すごく………」
「すごく、何だよ」
途切れた言葉に首を捻って問うが臨也は苦笑するだけで。
「なんでもないよ」
そう言って、またパソコンの画面へ向き直ってしまう。
再び、カチャカチャとキーボードを叩く音。

「………」

しばらく待ってみたが、臨也からのアクションはなくて。
よくわからないがもう咎める気はないらしいと察して、静雄もまた、臨也に触れるという欲求を満たす作業へと戻っていった。












※暇だとつい触れて構いたくなっちゃう人の話。