5.大団円ということでよろしいでしょうか。
※5話目。










結局のところ、静雄と臨也は多少ベクトルは違うが両想いなのだと。
そう、彼らの幼馴染で自称親友の岸谷新羅は思っていた。
しかし、そんな二人をよく知る彼にしても、臨也が静雄をそういう意味で受け入れるかと問われれば、それは難しいんじゃないの、と答えるしかなかったのだが。
だが、それもつい先日までのことだ。



「いやぁ、よかったよ。毎日毎日教室の空気の悪いことったらなかったからね!」
おめでとう!と静雄に向かって言う新羅に。
二人はなんとも言えない顔をして見せた。

「おや?何か言いたそうだね?」
「…別に」

シズちゃんこの妖精馬鹿はもう放っておこう、と言って臨也は静雄の服の裾を引っ張る。
相手にするだけ無意味だと考えたらしい。
だが、静雄は臨也と同じ意見ではないのか、「ちょっと待て」と制して、新羅と門田に向き直った。

「悪い。迷惑かけたみてぇだな」
「いや、君は迷惑かけてないよ。悪いのは鈍感な臨也だけさ」
「ちょ、新羅!俺のどこが鈍感なのさ!」
「んー…そういうところかな?」
「なにそれ!!」

そういうところってなんだよ!はっきり言え!
そうぎゃんぎゃん喚く臨也に3人は苦笑する。
どうやら彼は自分が実は鈍感なのだろうかと考えたことはすでに忘れてしまっているらしい。
新羅に突っかかる臨也に、静雄と門田は顔を見合わせて苦笑を深くした。

「良かったな」
「…おう、ありがとな」
「まさか臨也がお前と付き合うと言い出すとは思わなかったが」
「あー…それは、俺もだ」

門田の言葉に頷いた静雄は、そこで門田の目が笑っていないことに初めて気付く。
あ、やばい。そう直感する。
そうだ。そう言えばこの友人は臨也の保護者のようなものだった。
そう思い出して、ひくりと頬を引き攣らせる静雄に、門田は笑顔で言う。

「もし臨也を泣かしたらただじゃおかないからな」
「…き、肝に銘じます」

よし、と頷く門田は本気だ。
それを臨也を適当にあしらいながら見ていた新羅はくすりと笑う。
戻ってきたいつもの光景に、少しだけほっとしているのは事実。
4人のうち誰かが欠けてしまうのはそれなりに寂しいよねと、セルティ一筋で他などどうでもいい癖に我侭にも彼はそう考える。
と。静雄がくるりと体を反転させて、いまだ新羅に文句を言っている臨也の腕を捕らえて自分の方に引き寄せた。
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、臨也は苦しいと怒りの矛先を静雄に変えた。

「シズちゃん一体何のつもり?」
不機嫌な問いかけに、宥めるように目元にキスを落とす静雄は教室だろうと自重する気は一切ない様子で。
対する臨也も、そのことについては咎める気はないらしい。
「臨也、手前いつまで新羅にばっか構ってる気だ」
臨也以上に不機嫌な低音での言葉に、腕の中の囚われ人は目を眇め口の端を吊り上げた。

「へえ、そういうこと言っちゃうんだ。生意気だなぁ。ねぇ?臆病者の泣き虫シズちゃん」
「…誰がだ」
「君だよ、平和島静雄くん。フラれた〜って勝手に思い込んで逃げ回って、それで告白されたら泣いちゃう可愛い可愛い俺のシズちゃん」
「…手前」

ムッと眉を寄せ、顔を真っ赤にして恨めしげに睨む静雄に。
臨也はにんまりと笑ってみせる。
どうやら軍配は臨也に上がったらしい。
すっかり蚊帳の外に置かれた新羅はそう思い。
そして、静雄をやり込めつつも甘い雰囲気を醸し出す臨也と、そんな臨也に何だかんだ言いつつも満足そうな静雄に、首を横に振った。
ひょっとして無自覚バカップルってこういうのを言うのかなぁ。
そんなことが一瞬頭を掠めて、何だか無性にセルティに会いたくなって。
新羅はさっさといちゃつく二人に見切りをつけて、愛しの妖精へと思いを馳せるのだった。












※めでたしめでたし?