「ねぇ、もしかして君たちって…」
※同居パラレル設定。










臨也と静雄が同居するようになってから随分経つ。
元々の折り合いの悪さ――と言っていいのかさえ微妙な仲の悪さ――が嘘のように、彼らは互いをそれなりに尊重し合う生活を送っているらしかった。



「いや、さすがに僕もまさかこんなに長続きするとは思ってなかったよ」
「?何がだ?」

新羅の言葉に静雄が首を傾げる。

「だから、君たちの同居だよ。言い出した俺たちが言うのもなんだけど、よくこんなにもっているもんだと感心しているんだよ」
「あー…」
言われて、静雄は自分の横でのんびり紅茶を啜っている臨也に視線をやった。
が、臨也はそれを意に介す気もないらしい。

「まあ…こいつがこういう風に俺に突っかかってこなきゃよ。別にもう怒る理由もねぇっていうか…」
「いや、君それ以前にもっと酷い目に合ってるよね?」
「ああ、まあ…そう、なんだけどよぉ」

言葉を濁す静雄は、どうやら臨也に対して同居以前ほどの怒りを感じなくなってしまっている様子である。
素直というか、単純というか。
それでいいのかと思わないでもなかったが、新羅はそこに突っ込むのは止めることにした。

「まあ、とにかく。俺としては今はあの時のお前らに感謝してんだよ。でなきゃ、今でもこいつと殺し合いの喧嘩してただろうしな」
「あはは、どういたしまして、と言うべきなのかな?」

しかし、と新羅は思う。
何と言うか、二人の間の雰囲気が前と違う気がするのだ。
いや、もちろんかつての殺伐とした関係と比較してではない。そもそもそれでは比較の対象にはなりえない。
ただ、本当に何となく。同居し始めの頃とも、同居を始めて1ヶ月が過ぎた頃とも違う気がするのだ。

「臨也、君さっきから黙ってるけど、どうしたのさ?」
いつもなら余計なことまでぺらぺら喋るはずなのに、今日はやけに静かな相手に話しかけてみる。
だが、返事はない。

「臨也?」

不審に思ってもう一度声を掛けた新羅に、何故か臨也本人ではなく「あ…」と静雄が声を出した。
臨也の顔を覗き込むように姿勢を低くして、ついでに臨也の持つティーカップに手を伸ばす。

「手前な、眠いなら眠いって言えよ」

そう言いながら静雄がカップを取り上げたことで、漸く新羅も臨也が静かな理由を知った。
いや、何で分かるのかな。どう見ても喋ってないだけでいつも通りの臨也だったんだけど。
そう思うが、何だか問う勇気が湧かない。

「おい、臨也」
「ん…」
「ちっ、ダメか」

舌打ちして、静雄は新羅に視線を戻して言った。

「セルティに用事だったんだけどよ…仕方ねぇから出直すわ」
「ああ、うん」
「ったくよぉ、眠いんなら眠いって会った時に言えばよかったのによ」

文句を言いながら、静雄はくいっと手に持ったカップの中身を飲み干す。

「…………」

ねぇ静雄。それ、臨也の飲んでたカップだから。思いっきり間接キスだから!
そう叫びたい新羅だったが、あまりにも自然な静雄の行動に衝撃が先に立ってしまい。
結局、半ば放心したまま臨也を支えて出て行く静雄を見送ることしか出来なかったのだった。












※甘いといえばこの二人。無意識なラブラブ度は間違いなくこの二人が一番だと思います。(注:でも付き合ってません。)
こいつら絶対家でも普通に回し飲みとかしてると思います。昔の嫌悪感はもう欠片もないという…。
あ、シズちゃんと臨也さんは一緒に来たわけではなく新羅のマンションの近くで偶然会っただけです。