今日は何の日?
※シズイザ…?










「………」
用事のない日の折原臨也の朝は決して早くない。
寝起きが良くないのも一因ではあるが、基本的に仕事が入っていなければ早起きはしないと決めていた。
だというのに、だ。非常に不本意だが、この日は違った。
忙しすぎるくらいに忙しかった日々を過ごして、ようやく確保した貴重な休日。
臨也は柔らかいベッドで心地よい眠りの中にあったのだが、突如訪れた男によって、その眠りを妨げられることになった。
時刻はまだ午前7時。今日だけは気が済むまで布団に張り付いていようと思っていただけに、不快以外の何ものでもなかった。

「…何の用かな、シズちゃん」

布団を被ったまま、問う。
――そう。臨也はいまだベッドの中にいた。
なのに、合鍵を持っていないはずの男がここにいるのだ。何か堅い物がひしゃげる音で覚醒した臨也は、その音と静雄の存在が意味するところを正確に理解して、玄関の惨状を思い小さく溜息をつく。

「朝だぞ起きろ」
「…シズちゃん、君はいつから俺に目覚まし時計になったんだい?勘弁してよ、まだ眠いんだから」

静雄の言葉に文句を言って、臨也はまた寝る体勢をとる。
しかし、相手は臨也の話など聞く気もないのだろう。情け容赦なく布団を引き剥がされてしまった。
仕方なしに静雄に視線を向けて、臨也はもう一度「何の用だい」と訊く。

「手前、今日が何の日か忘れたのかよ」
「…えー…何かあった?」

首を捻って考える。
不機嫌そうに皺が寄る眉間をぼんやり見ながら、考えることしばし。
ああ、そう言えば、と思い出した。
なるほど。確かに今日はある意味記念日のようなものかもしれない。
だが。
「…色気がないなぁ」
「ああ゛?」
青筋を浮かべた静雄に苦笑して、臨也は身を起こす。
そして、にんまりと静雄の嫌う笑みを浮かべてみせて。
からかうように思ったことを口にした。

「だってせっかくの記念日なのに、そういう起こし方ってないと思うんだよね」
「あ?」
「だーかーらー、こう、もっとそれっぽい起こし方ってのがあるんじゃないの?仮にも俺たちは恋人同士で、今日はお付き合い一周年なんだし」
「…忘れてたじゃねぇか」
「あははは、それはごめん」

でも、と臨也は思う。
どうせならあんな叩き起こすも同然の方法ではなく、優しく起こして欲しかったものだ。

「大体、それっぽい起こし方ってなんだよ」
「え?そうだなぁ、例えば、耳元で囁いてみるとかキスしてみるとか。定番だよね」
「誰がやるか!!」
「ですよねー」

まあ、そんなのシズちゃんじゃないよね。と頷いて、臨也はくつくつと喉の奥で笑う。
それから、馬鹿言ってんじゃねぇと唸る恋人に手を伸ばして、抱きついて。
「おはようシズちゃん」
これからもよろしくね。と耳元に囁いたのだった。












※ラブラブなケンカップル誕生から一周年らしいです。