「アイツの弱いところも可愛いところも、知っているのは俺だけでいい」
※お題『組込課題・台詞』より。からだのお付き合いはしてるけど、たぶん精神的にはシズ⇔イザ。君たちって本当に独占欲が強いよね








眠る臨也の顔を見つめる静雄を新羅は眺めていた。
頭にケガをして気を失った臨也を新羅のマンションに担ぎ込んだのは静雄で。
彼は一向に目を覚まさない臨也の側で、ただ黙って座っている。
彼らの関係は複雑だ。殺し合いの喧嘩をするのに、こうやって自分が傷つけた相手の心配もする。

どうしてこの二人はこんなに頑ななのか。新羅にしてみれば馬鹿馬鹿しいことこの上なかった。
奇妙な関係を続けながらも、複雑に絡み合った感情のその根底に潜むものから彼らは頑なに目を逸らし続けている。

治療中、静雄を追い出した室内で意識を取り戻した臨也に問いかけたが、返ってきたのはのらりくらりとかわすような言葉だけで。
何故か無性にイラついた新羅は、こっそり臨也に麻酔を注射して腹いせとした。
そのせいでいまだ昏々と眠る臨也をどう勘違いしたのか、静雄は側を離れないでいる。

「結局のところ、静雄は臨也をどうしたいわけ?」
「どうって…」
「酷いケガさせる度にそんな顔する理由、考えてみたことある?」
「………」

黙り込む静雄に、新羅は先程治療室で饒舌に嘘を語る臨也を思い出す。

「いっそ助けなければすぐにでも縁は切れるよ?臨也は肉体的には普通の人間だからケガが酷ければ普通に死ぬからね」
「っ」
「中途半端に繋がった関係って気持ち悪くないのかい?」
「俺と臨也は…」
「恋人じゃないのは知ってるよ。でも、だったら何でそんな顔をするんだい?」

気絶の原因は脳震盪で、裂傷はそこそこ酷い状態だった。もっとも、傷は髪に隠れる位置であったしそもそも浅かったのでほとんど残らないだろう。
そう説明しても、静雄は眉間に皺を刻んだまま臨也の眠るベッドの横に座り込んで動かない。
その理由を勝手に言い訳してこじつけて、どうあっても真実と向き合おうとしない二人に新羅はため息をつく。

「俺は…」
「君らの関係が歪なのは今に始まったことじゃないけど、いい加減少し考えてみたほうがいいと思うよ」
俯く静雄を見つめたまま、新羅は言葉を続ける。
「傷つけ合うくせにそうやって結局離れられなくってさ」

そこでもう一度ため息。

「そんなので、いつか臨也が君に見向きもしなくなる日が来たらどうする気だい?確かに臨也は出会ってからずっと君にちょっかいを掛け続けてるけど、それだってずっと続く保証は無いんだ」

人間の関係なんてどちらかが手を放せばあっけなく切れてしまうものなのだと告げれば、静雄の瞳が動揺に揺れた。

「それは…」
「いいかい静雄。臨也は自分の意思を持った一人の人間で、決して君だけのものではないんだよ」
「…わかってる」
「じゃあついでに言うけど。ああ見えて臨也は繊細なところもあるし強くもないし傷つきやすい。君はそこのところ、ちゃんと分かってるのかな?」
「…ああ、わかってる」
「本当かい?」
「ああ。…なあ、新羅」
「なに?」
「今ひとつわかった」

一呼吸置いて、酷く静かな声で静雄は新羅に告げた。

「…あいつの弱いところも意外にかわいいところも、知ってるのは俺だけでいい」

臨也が自分を見るように他の誰かを見るのも、他の誰かが臨也のそういう部分を知るのも許さない。
どこをどう考えた結果出てきた言葉かは分からないが、呟くように、だがきっぱりと言った静雄の目は真剣で。
そこまで分かってて何故その真意に至れないのかと、新羅はため息をついてやれやれと首を振った。

―この二人は本当にお互いに対する独占欲が強過ぎるよね。自分の気持ちにすら完全には気付いていないのに愛憎混じり合ってまさに渾然一体と言うべきか…。

「まあ好きにすればいいよ」

やっていることはどれほどかけ離れていても、結局彼らのそれはまさにお医者様でも草津の湯でも、の類なのだ。治療法の無い病なら新羅にはどうしようもない。
自分には直接関係無いことだしこれ以上拗れない限りは放っておこうと、新羅はさじを投げて傍観に徹することに決めた。












※あと一押を押してみようかと思ったけど面倒になって最後は放置する新羅。
新羅は基本セルティ以外はどうでもいい人だと思います。


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