大好きな君へ試練を
※お題『駆け引きの恋十題』より。シズ⇔イザ。付き合ってない設定。連作。








折原臨也は平和島静雄のことが好きである。
当人は決してそれを口にしないどころか大っ嫌いだとまで公言しているかもしれないが。
静雄をからかうのも罠に嵌めるのも日々の日課のようなものでそこに好意など見出しようもないかもしれないが。
実際問題として折原臨也は平和島静雄のことが好きなのである。





すぐ横に落下した自販機に、臨也は口の端を吊り上げた。
先程から投げつけられる数々の公共物をことごとく避ける臨也に、目の前の相手は怒りも顕わに次の哀れな犠牲に手を伸ばす。

「そろそろ潮時かな」

避けているとはいえ、1時間以上に及ぶチェイスで掠り傷や切り傷はそれなりにできていた。
これ以上の被害を被る前に退散するのが正しい選択だと臨也は判断し、片手でナイフを弄びながら静雄の様子を窺う。
そして、手の中のものが投げられたことを確認してすぐ、走り出し。
投げた直後の瞬間のことにとっさに対応できなかった静雄の懐に潜り込む。


ちゅ。


静雄の頬に柔らかい何かが当たり、軽いリップ音を立てて離れる。
何が起こったのか分からず。
一瞬、完全に静雄の動きが止まった。
その間に臨也は届かない位置までさっさと移動してしまう。


「ッ!……臨也ぁぁ!!」
「シズちゃんバイバーイ」

ようやく発された怒声に笑って。
ひらりと身を翻し、臨也は人混みに紛れて静雄の視界から完全に姿を消した。










「俺がシズちゃんを好きでもさー、別に誰に迷惑をかけるわけじゃないんだし良いと思うんだけど」
「いや迷惑だから」

手当てしながら文句を言い続ける新羅に臨也がそう言うと、ため息交じりの言葉が返された。
それに首を傾げてから臨也はまるで気付いていなかったいう表情で問う。

「俺、新羅に迷惑かけてるかな?」
「ケガするたびに家に来るのやめてくれるかい?そもそもここは僕とセルティの愛の巣であって…ぶほっ」
「あ、帰ってきたんだ」
『また静雄と喧嘩したのか』

新羅に制裁を加えたセルティがPDAを向けてくる。
その文字を読んでから臨也はふむと一瞬考え、首を振った。

「ちがうよ運び屋。喧嘩じゃない」
『…?喧嘩じゃないのか?』

不思議そうな気配を見せるセルティに臨也は目を細め、それはそれはたちの悪い笑みを浮かべる。
くつくつと心底愉快そうに笑って一言。



「これは、愛の試練だよ」












※愉快犯うざやさん。とりあえずくっつくまで続きます。


[title:リライト]