sweet kiss
※来神シズイザ。東雲さんへの捧げ物!…「付き合いたて」の部分が未消化でした…すみません…
















それまで、『触れる』という行為にそれほど意味があると思ったことはなかった。
でも、その認識は改めざるを得ないなと臨也は相手に気付かれぬように苦笑する。
ちゅっと音を立てて目尻から僅かに離れた唇が、そのまま今度は瞼に落とされて、そのくすぐったいような心地よさに浸って。
何度も降ってくるキスはそのたび場所を変えてきて、そのどれもが心地よくて、
「しずちゃん」
自分でも予想もしない甘い声で相手の名前を呼んだ。
「ん…どうした?」
返事は返ってくるがキスは止まない。
本当に、ついさっき、ほんの数十分前までこんなにもこの行為に意味があるとは思わなかった。
「シズちゃんって、キス、好きなの?」
問えば、ようやく離される顔。そこに乗ったきょとんとしたとしか形容しようのない表情が、僅かな間で変化する。
「…しらねぇ」
「いや、自分のことでしょ」
「……俺は、さっきのが初めてなんだよ」
不機嫌そうな声でそう言って憮然とした雰囲気を醸し出す静雄に、今度は臨也がきょとんとする番だった。
「………うそでしょ?」
「嘘じゃねぇ」
「…………」
きっぱり言い切られて沈黙する。
だって、え、それってつまり?
言われた意味は理解できているのに理解できなくて混乱する頭でそれでも考える。
つまり、静雄は先程――それこそほんの十数分前にしたキスが、初めてだと言うことか。
「…それにしちゃ、気持ちよかったんだけど」
「あ?それは手前がうまいからじゃねぇのか?」
「…そんなわけないだろ、俺だって初めてだったのに」
「…………」
臨也の言葉に、今度は静雄が沈黙した。見開いた目から、大体何を考えているのかは想像がつくが。
「言っておくけど、本当だからね」
「……お…おう」
うん、とりあえず急に真っ赤になるの止めてくれないかな。俺までつられて赤くなりそうだから。
そう思ったところで、それで相手の赤面が直るわけでもなく。
ついにはお互い真っ赤になって俯く羽目になってしまった。
ああ全く予想外だ、と臨也は内心で呟く。
つまり、お互い初めてのはずのキスが気持ちいいと感じたのは、自分の心が大きく影響しているのだろう。しかも静雄の台詞から判断して静雄も気持ちいいと感じたのは確実だ。
ああもうやだ恥ずかしすぎだろ。
相思相愛なんて似合いもしない言葉が頭を過ぎって、ううっと唸って真っ赤になっているだろう顔を隠すようにさらに俯く。が。
「…なぁ、ノミ――じゃねぇ、臨也」
静雄がやけに遠慮がちな声を出すものだから、つい顔を上げてしまう。
「………何かな」
「キス、していいか?」
「………」
「気持ちよかったからもっとしてぇ」
「………」
沈黙したままの臨也を伺いをたてるように見つめる男の目は真剣だ。
本能優先かよこれだからシズちゃんは嫌なんだ。そう思ったところで相手はたぶんあまり思考の猶予をくれたりはしないだろう。
それに自分も、気持ちいいからもっとしたいと思う…ではなく、思わなくもない。
「したいならさせてあげてもいいけど」
素直に自分もだとは言えずにそう告げれば、言葉に含まれた意味を本能的に感じ取った(としか思えない)静雄が身を屈めて顔を寄せてくる。
ちゅっと小さな音を立てて頬にキスされて。
臨也は緩みそうになる顔を意識して不機嫌そうなそれに保ちつつ、次のキスを待った。
ちゅっちゅと繰り返される口づけは優しくて、じんわりと胸が暖かくなる。
でも、この心地よさが好きだからなのだと自覚してしまえばそれだけではもう物足りなかった。
もっと、静雄に触れて気持ちよくしてほしかった。
「シズちゃん、くちも」
「お、おう」
ほとんど無意識に口をついて出た言葉にしまったと思ったが、撤回する前にちゅ、と。
優しく触れるだけのキスが唇に降りてくる。
人生二度目の口づけが一度目より柔らかく穏やかであることに笑って。
臨也はもういいやと白旗をあげて静雄を誘うようにその唇を食んだ。












※キス初心者だけど気持ちでカバーしちゃうなんともバカップルな二人…。

遅くなってしまい申し訳ございませんでしたっ><
リクエストありがとうございました…!