めらんこりっくほりでい
※派生組にモテモテ(笑)な臨也さん。ユウキさんへの捧げ物!















臨也の家には現在居候が3人いる(暫定的な部分を含めれば4人だが)。
そのうちの一人、サイケデリック静雄ことデリックは、臨也にとってある意味静雄以上に訳の分からない相手である。
よって。

「臨也さん、ぎゅーってしていいですか?」

唐突なデリックのその言葉にまた意味不明なことをと思うだけだった。
甘えたがりなのか何なのか、時折こういうことを言い出すこの男は臨也の頭痛の種であるが、まあ、それだけなので害はないということで大概は放置することにしていたりもする。
だから今回もそうしようとしたのだが、さらに何度か「ぎゅーってしていいですか?」と訊かれては無視するわけにもいかなかった。

「いや意味わかんないし却下…というかしつこい」

じろりとデリックを睨んであっちへ行けとしっしと手を振るが、さすが何回も訊いてくるしつこい相手というべきか。
「じゃあ、せめてキスさせてください」
と、さらに意味不明なことを言ってきた。

「……難易度上がってないかい?」
「えー…じゃあ――」
「臨也くん!」

声と同時に衝撃がきた。
こんなことをする相手は一人しかない。
はあ、ともう何度目になるか分からない溜息をついて、臨也は視線をそちらに移す。

「…サイケ」
「っ…このクソ兄貴!ずるいぞ!!」
「俺はいいのー。デリはだめだけど」
「何で!?」

こいつらウザい…。
そう思うのも仕方ないというものだ。
睨み合う二人に挟まれて、鬱陶しさに辟易する。
と、サイケと一緒にきたらしい――静かすぎて意識されていなかった――津軽が助け船を出してくれた。

「サイケ、臨也が困ってるからやめてやれ」
「えー…」

津軽に弱いサイケはそう言われて困ったように眉を寄せて。
わずかな間の後、いいことを思いついたと言わんばかりに顔を輝かせて津軽を見る。
「あ!じゃあ津軽も一緒にぎゅーってすればいいよ!デリはだめだけど」
「だから何でだよ!?」
「………」
どこをどうすればそんな結論になるんだ…と言いたくなるようなサイケの言葉に、デリックは叫んで津軽は沈黙した。
サイケの提案に津軽は何度か目を瞬かせて、それから首を僅かに傾ける。
…ねぇ津軽。何でそんないいのかな?いいのかな?って窺うみたいな顔してるの。っていうか、いったい何なの…。……だから、そんな目でこっちを見るなよ。
小首を傾げて、”よし”と言われるのを待っている子犬みたいな目だ。そう思って、臨也はああもう、と呻いた。

「…おいで、津軽」

途端、津軽の目が輝く。小さく頷いて、ぎゅうっとサイケごと臨也を抱きしめる津軽は、何だかとても満足そうだ。
津軽はシズちゃんやデリックほど表情が動く方じゃないけど、さすがにこれはわかるなぁ。なんて遠い目をして思って、また溜息を一つ。
「…っ、ズルいッス!」
俺もぎゅーってしたいッス!と喚く阿呆はあくまで無視。
臨也的にはさすがに3人に抱きしめられるのは嫌すぎるし、デリックはうるさいから余計嫌だったのだ。

「……手前ら何してやがるんだ…?」

唐突にかけられた声に首を巡らせれば、そこには津軽とデリックの原型である男の姿。
やけに不機嫌そうな彼の様子に臨也は首を傾げて、
「やあ、シズちゃん。どうしたの?」
ひらりと手を振って挨拶してみるが相手は険しい顔を崩さない。
「手前ら何してやがる…」
臨也の言葉を無視した静雄の再度の問いにはサイケが答えた。

「んー?臨也くんをぎゅーってしてる?」
「…静雄にはやらないからな」
「つか俺もぎゅーってしてぇ!」

上から、サイケ、津軽、デリックの発言だ。

「「「「………」」」」

静雄を含めた四人分の沈黙と、そしてなぜか漂う険悪な空気。
眉根を寄せて獰猛そうな笑みを浮かべた静雄が、
「………いい度胸じゃねぇか」
と呟いて。
それに反応するようにサイケと津軽が腕の力を強めた拍子、手にしていた書類の束が滑り落ちる。
ばさりと散らばるそれを気にするのは臨也だけで、他の連中は互いに睨み合っているだけだ。

――うん。どういう構図なのかよくわからないけどさ。君ら俺を無視して睨み合うのやめてくれないかな。できれば俺のいないところでやってくれ!

そんな臨也の心の叫びは、水面下で彼を巡る熾烈な争いを繰り広げる4人にはまったく通じないのであった。












※シズ→イザよりのシズイザ+派生組でお送りしました!

遅くなってしまい申し訳ございませんでしたっ><
リクエストありがとうございました…!