短いの詰め合わせ…てないけど3。
※小ネタ。RT小話とRTからの派生話。














※RTの片思い×料理下手。来神時代。


「………」
調理実習の後。
焦げたクッキーの入った袋を机の上に置いたまま、臨也は不機嫌そうに窓越しに外を眺めていた。
「だからさぁ、別に臨也だけのせいじゃないんだからさ。僕だっていたんだし、連帯責任ってことでいいんじゃないかな?」
「………」
新羅の言葉にも、不機嫌そうな顔はなおらない。
よほど、失敗を静雄にからかわれたことが気に入らないらしい。
ふうと溜息をついて首を振った新羅は、お手上げだと苦笑した。
静雄も構いたいなら素直に普通に構えばいいものを。と、好きな子に云々という小学生並みの嫌がらせをする静雄を思い浮かべていると、その当人が教室に入ってくる。
「…あ?まだ拗ねてんのかノミ蟲」
拗ねている元凶が声をかけると、臨也はようやく視線を動かしてちらりとそちらを見た。
「どうせ、俺は不器用だよ」
声にまでふてくされた響きが混じる。
どうやら本気で機嫌を損ねたらしいと気付いたのか、静雄は頭の後ろを掻いて。
「あー…ったく」
そう呟いて、臨也の前にずいっと手にしていたものを突き出した。
目の前に突然突き出されたものに、臨也は目を丸くし、静雄をとそれを交互に見る。
机の上のそれと同じ、簡素なラッピングを施したそれは、先程の実習で静雄が作ったクッキーだ。
「やる」
そう言って、受け取れと目線で促されて。
臨也はほとんど無意識にそれを受け取った。
そして、
「…ありがと」
呆けた顔のままそう言った臨也に、静雄は「別に」とそっぽを向く。
――あーあ。静雄は素直じゃないし、臨也は鈍いなぁ。
一部始終をすぐ側で見ていた新羅はそう思ったが、結局口は出さなかった。

これが、静雄が臨也に送った初めてのプレゼントなのだが。
そのことに双方が気付くのは、数年越しの静雄の片想いが実った、そのあとのことだった。








※コスプレRT(1人人数足りなかったので書かなかった)から派生した小話。


ほんの気まぐれに。
臨也はサイケの格好をして街中を歩いていた。
出会う面々は皆、面白いくらいにだまされて、最後に臨也だと知った時の衝撃的な顔がまた臨也を愉快にさせてくれる。
高揚した気分のままほとんどスキップに近い歩調で歩く彼は、だから、気付かなかった。――自分の天敵が、すぐ側まで近づいていたことに。
「サイケ」
声をかけられて、臨也の足が止まる。
そろそろと振り返ると、そこには分かりきっていたが、静雄の姿。
兼恋人という間柄だが池袋で出会う限り、やはり天敵の比重のほうが大きい。
警戒しながら、ふわりとサイケがよく浮かべる笑顔を浮かべて、
「シズちゃん!」
と言えた自分を、臨也は褒めたい気持ちになった。
やばいやばいやばい。天敵に出会ったことよりも、臨也だと気付かれる方がやばい。
そう思って、必死にサイケの静雄への対応を思い出そうと試みる。
恥ずかしいなんてものではない。サイケのコスプレ(…)などしているとばれた日には、どれだけ笑われることか。
「シズちゃん、今日はおしごとおしまいなの?」
「あ?いや、休憩だ。お前こそ、今日は臨也と一緒じゃねえんだな」
きょろきょろ見回しながらそう言われて、内心ドキドキである。
ばれたら、ホント恥ずかしい。どうしよう。
うううと心中で唸って、必死に笑顔を保つ。
「臨也くんは今日はひとりでおでかけしたよ」
「…ふうん、そうか。なんかくせぇ気がしたんだけどな…どこに居やがるんだあの野郎…っと、サイケはなにしてんだ?」
「お、つかいだよ。臨也くんにたのまれたの」
「そっか。えらいな」
「えへへ、ありがとー」
これで合っているだろうか。自信がなくなりかけたが、絶対に静雄にはばれたくなかった。
穏やかな顔つきで自分――もちろん静雄はサイケだと思っているのだろうが――を見つめる静雄に、早くどこか行けと念じる。
それが通じたのかどうか。
「じゃ、俺はそろそろ仕事に戻るけどよ」
そう言った静雄は臨也の頭をぽんぽんと軽く撫でてから、「気をつけて帰れよ」なんて言って去っていく。
そんな静雄の背を見送った後、臨也は盛大に息を吐き出した。
「あーやばい。シズちゃんに会うのは想定外だったよ…」
もうサイケごっこはやめよう。静雄にばれたらいろいろな意味で恥ずかしい思いをしそうだ。と考えて、ふるりと首を振る臨也であった。












※人数別垢含めるとギリギリ足りてた片想い×料理下手は、RTしてくれた方へ(勝手に)捧げますー