短いの詰め合わせ2。
※ついった小ネタ。ネタ振りしたりされたりしたやつ。














※シズイザ小ネタ。周りを気にする人としない人。


「…シズちゃんなんかさっさと死ねばいい」
顔を顰めて上目遣いに薄っすら涙の溜まった目で睨まれて。
静雄はどうしたものかと気付かれぬ程度に溜息をつく。
怒らせたのは自分だし、悪いのも自分だと分かっている。
「…でもよ、そろそろ機嫌直せ」
「知らない」
「いーざーや」
「知らない馬鹿」
ぷいっと顔を背けられて、静雄は苦笑した。
意外といえば意外だし、一方である意味では納得できなくもない。
この男にも常に周囲を警戒せねばならない生き方をしている自覚はあるのだろう。
そう思って、まあ仕方ねぇよなぁとそういう相手と付き合っているのだしと自身を納得させて、静雄はふーと息を吐き出した。
「別に…誰もいなかっただろうが」
「だからって路地裏なんて誰がいつ覗くかわからないだろ」
「……あー…まあ…そりゃ、そうだけどよ」
だからって、あんな僅かな接触でそこまで怒るとは思わなかったんだよ。
そう思いつつ、これ以上刺激しないように気をつけながらそっと手を伸ばした。
「…だれが、触っていいって言ったの」
文句を言うくせに撥ね退けないのは、たぶんもうそこまで怒っていないからだろうと判断して、細身の体を引き寄せる。
「そんなに嫌だったのかよ」
「嫌とか…そういう問題じゃないし」
「嫌だったのか?」
「………。別に、誰かに見られないところでなら、いいけど」
「見られるとやっぱ困るか」
問うと、臨也は複雑そうな顔をして、何度か何か言おうと口を開いては閉じることを繰り返した。
でも結局、真正面を向いて言うことはできなかったらしく、ううっと唸って俯いて。
それから、先よりも潜めた声で、言う。
「だって、見られたら、恥ずかしいじゃないか」
だから、と続ける臨也の顔は真っ赤だ。
「あんなところで、キスとか、するな」
ああ隙を見せることへの警戒ではなく、そっちだったのか。
そうようやく理解して、静雄はくすりと笑った。
しかも、キスそのものは決して嫌ではないのだと告白してしまったことにたぶん臨也は気付いていない。
「悪かった。次からは気をつける」
何となく愉快な気持ちになりながら、そう言って。
静雄は、予想外に恥ずかしがりな恋人のその瞼にひとつキスを落とした。








※たぶんフェスか何かで投下したネタ。なぜかほぼ臨+波。


「貴方、平和島静雄のことシズちゃんって呼ぶけど、本人を静雄って呼んだことはあるのかしら?」
何の会話の最中だったか。――いや、あるいは臨也だけがしゃべっていたのかもしれないし、むしろその可能性のほうが高かったが…。臨也に優秀で冷静な秘書からそんな言葉が投げかれられたのが、一週間前。「えー、なんで俺がシズちゃんをそんなふうに呼ばなきゃいけないのさ」と答えたのも一週間前。
それをふと思い返して、そういえば呼んだことないなぁ、と呟いたのが6日前。
それが頭から消えず、静雄の前でその名前を呼ぶシミュレーション(笑)を始めたのが5日前。
どうしても呼べる気がしなくて挫折しかけたのが2日前。
そして、現在。
「しず…しずお、しずおしずおしずおしずおしずお」
どこかの妖刀のような呪詛じみた言葉を繰り返す臨也は、その言動の元凶になった秘書に非常に冷めた目を向けられているのにも気づかず、ただ同じ語を口にしながらパソコンを弄っていた。
「…貴方、気持ち悪いわよ」
「しずおしずおしずお…え?何か言ったかい?」
「……何でもないわ」
なんだか一瞬哀れむような視線を向けられた気がして、臨也は首を傾げる。
「……まあいいか。波江さん、俺ちょっと池袋行ってくるよ。こっちの書類は――」
そういくつか指示を出しながら立ち上がった臨也に、浪江はもう小さく息を吐いただけだった。



「いぃぃざぁやぁくぅん?なぁんで手前がここに居やがるんだぁ?」
「やあ、相変わらず元気そうだね」
「手前も相変わらずみてぇだなぁ…?そのうっぜぇ面今日こそぶん殴ってやるから覚悟しろよ?」
「ははっ、怖いなぁ」
一応は成り立っているらしい会話を続けながら、臨也はどうしようと頭を抱えたい気分になっていた。
いつもなら、シズちゃんと名前を続ける台詞に、静雄、と付けることができない。
何故か、どうしてもできないのだ。
「ねぇ、し…しず…」
あ、やばい。詰まった。
そう思ったがもう遅い。
いつもは滑らかな口が言葉を途切れさせたことに、静雄が怪訝そうな顔をした。
「あ?なんだ?手前なんか顔赤いぞ…?具合悪いのか?」
覗き込むように身を屈められて、必然顔が近づく。
「あ、いや、えっと…そうじゃ、ないけど。あ、あのねっ」
「おう」
臨也がいつもと違うせいで怒りが一時的にどこかに行ってしまったらしい静雄は、おとなしく次の言葉を待っている。
少なくとも池袋の街中での二人にはそうある光景ではない。が、臨也はそれをどころではなかった。
「あ、の…し、しず…」
「?」
何で言えないんだ!ただ一言、静雄というただそれだけだ。いつもの呼び名からちゃんをとって、代わりにたった一文字おをつけるだけだというのに。
ううう、と唸って。臨也は静雄から視線を逸らす。
「し…し、しず…しず…」
「…?お前本当に大丈夫か?」
そう言って、静雄の手が額に伸ばされて。
臨也はうわわわっと叫んで飛び退いた。
「おい…?」
「な、なんでもないよ!ごめん!俺用事思い出したから帰る!!」
そう言って、くるりと踵を返して慌てて駆け出す臨也に。
静雄は呆気にとられて、あいつ本当に大丈夫か…?と呟いたのだった。



それから、事あるごとに何度も「静雄呼び」に挑戦した臨也だったが、秘書によれば、結局いまだに成功を収めていないとのことらしい。








※静←臨前提デリ臨…というかデリ→臨也?


手首に巻かれていく包帯を見つめて。
臨也は小さく息を吐いた。
慣れた手つきで手当てをする男を視線だけで見上げて、僅かに顔をしかめる。
「はい、できましたよ」
そう言って、そっと掬った指先にキスを落とす相手。
「デリック」
「はい?」
呼ぶと少し首を傾げて見つめてくる目に居心地の悪さを感じながら、臨也はしばし思案する。
呼んでみたものの、別に何か言いたいことがあったわけでもない。
「手、離せ」
とりあえず、いまだ触れ合わせたままの手を離すように言ってみる。
が、それは、嫌ですと一言で却下された。
「…なんなの君」
不機嫌さを隠さない声と表情で言ってやっても、相手はまるで愛しいものでも見るみたいな柔らかな視線を向けてくるだけだ。
「せっかくきれいなんだから、傷だらけにしないでくださいよ」
「…うるさい。俺の勝手だろう」
「俺が、嫌なんです」
「………」
また指先にキス。
自分にケガをさせた相手と同じ顔が見せる、まったく違う表情に。
臨也は苛立ちというには弱い、苦しさを覚える。
「俺にしませんか?俺なら、あなたを傷つけない」
「……、…」
真摯な瞳を向けられて、言葉に詰まった。
確かにデリックならば自分を傷つけたりしないだろう。優しく、愛してくれるだろう。
でも、それでも。
それは、臨也の望むものではないのだ。
「…ごめんね、デリック」
手を伸ばして、伸び上がって。
そっと口付けた唇は、何故か塩の味がした。












※15分以内で書けそうなネタだけチョイスしてぱぱっと書いたやつ。見直ししてないんで変なとこあると思います。すみません…