一枚の毛布に包まる









「…さむ」
ひんやりとした空気が室内を満たしていて、静雄は寒さに身震いした。
真冬の外気は冷え切っていて寒がりの静雄の身体は帰宅する前から既にガチガチと震えていた。
室内のほうが風がない分マシとはいえ、寒いものは寒い。
シャワーを浴びれば多少は温まるだろうが、防寒などないに等しいボロアパートの一室だ。バスルームの温度を考えるだけで寒さが増す気がして足を向ける気も起きない。
しかたないと布団に潜り込んで寒さを凌ぐことにした静雄は、だがすぐに足を止めることになった。

「なんで手前がいるんだ」

自分の布団の中にに丸まって、静雄の天敵―折原臨也が寝息を立てていた。
不覚だ、と静雄は思う。寒さで感覚すら鈍ったのか、室内に入り込んで布団を占領する男の存在に近づくまで気付けなかった。

「おい臨也、手前なんで人の布団で寝てやがる」

寒さで声を荒げる気も起きない静雄は内心で燻る怒りを深呼吸で静め、布団を陣取る男の肩を揺さぶる。
「…ん、あ…シズちゃんおかえりー」
もそもそと動いてそう言った芋虫と化している生き物を静雄は不愉快そうに見下ろすが、そうとう眠いのか臨也はすぐに目を閉じてしまった。

「おい臨也」
「う、ん…しずちゃんのうちって寒いねぇ…寒がりなのによく、へい…き…」
喋っている最中にも意識が沈むのか最後のほうはほとんど聞き取れないほど小さい。
「寝るな」
「だって…」
「だってじゃねぇ」

愚図る臨也を布団から叩き出そうとかけた手に力を込めた静雄は、ふとそのぬくもりに手を止めた。
体温で温まった布団、眠さのせいかぽかぽかと暖かい臨也の身体。
ぶるりと室内との温度差に震える。

「仕方ねぇ…今日だけだぞ」

冷え切った身体に心地よいその温度に、静雄は全てを後回しにして暖を取ることに決めた。
ごそごそと同じ布団に潜り込む。ああ暖かい。

「あったけぇな」
緩く抱き締めて湯たんぽ代わりにすると。
「…シズ…ちゃん、つめたい…」
「うるせぇよ」
ほとんど寝言のような文句を腕に力を込めることで黙らせて、静雄は腕の中のぬくもりに満足そうに目を細めた。
そして、今日だけだと念を押すように自分に言い訳してから、黙ってさえいれば綺麗で好みな臨也の寝顔を眺め思う存分堪能することにした。










※寒がりシズちゃん。この二人はたぶん付き合ってない気がします。だからたぶんシズ⇔イザ。無自覚に無意識に甘々。


[title:リライト]