Call
※『mail』続編。1話ずつはすごく短いです。






side:S 後悔するということ


















なんで、と何度となく思った。
好きでいられるだけでいい、なんて柄にもなく思って。
態度にも言葉にも出さず、ただメールだけで繋がっていた。
その関係はあっさり相手に断ち切られて、残ったのは今まで送って送られたメールだけ。
あの日から、ちょうど一週間。
静雄の中の相手への想いは、吹っ切るどころか募るばかりだった。

「…臨也」

相手の名を小さな声で呟く。
顔を合わせば喧嘩しかしない相手。
絶対合わないと分かっているのに。顔を見ればムカつくだけなのに。もう諦めるべきなのに。
なのに、どうしても意識から追い出せない。

「…どうすりゃいいだろうな」

好きなのだ、どうしようもなく。
それだけははっきりしていて、もはや覆しようもないことだった。
ここ一週間メールの着信を告げない携帯を手にとって、静雄はそれをじっと見つめる。

確かに先にメールを送るのを止めてしまったのは自分だ。
だけど、どこかで信じていたのだ――この関係が途切れることはないと。
…裏切られたと思うのは間違いだ。そもそも、裏切るとかそんな関係ですらなかったのだから。
乱暴に携帯をポケットに突っ込んで、静雄は息を吐き出す。
苛々は収まる気配がない。

「………クソッ」

手を、伸ばせばよかったのだろうか。
思うだけでいいなどと思わず望むまま求めればよかったのだろうか。
今更詮無いことと分かりつつ、後悔して。
その鬱々とした気持ちを払うことも出来ぬまま、静雄は仕事に向かうためにサングラスをかけた。
八つ当たりはしないようにしないと…と自分を戒めるのはもう日課になっていた。効果は…まあ、ないに等しかったけれど。

――こんなんで、ホントあいつのこと諦められんのか…

自信はまるで、なかった。