37.これから先がどうあれ、












side:I





カーテン越しに差し込む光に、ふわりと意識が浮上した。
そのまま何度か瞬いて、そこでようやく、俺は自分を包む暖かい腕の存在に気付く。
少しだけ視線をあげると、すやすやと気持ちよさそうに眠る顔が、見えた。

「……、…」

一瞬状況がわからなかったものの、すぐに甦った昨日の記憶。
鮮明に覚えているそれらが再生されて、心臓が跳ねた。
うっわ、どうしよう。今絶対顔真っ赤だ。とりあえず落ち着こう俺。深呼吸だ。深呼吸。…シズちゃんが起きてなくてよかった。
目をきつく閉じてふうっと息を吐いて。
俺は落ち着け落ち着けと自分に念じながら、心臓が静まるのを待つ。
…最中は必死でそれ以外考えられなかったのに、今冷静に考えると、すごく恥ずかしいことをしたし言ったんじゃないか…とか思ってしまうんだけど…。

「…うわ」

…もうやだ。死にたい。
昨日の俺は俺であって俺じゃない。絶対違う。だってあんなの――………。
結局落ち着くどころかさらに煩くなった心臓にうううと唸って、そのままぐるぐるとわけのわからない思考に陥っていると。
急にシズちゃんが身じろいだ。
起きたのかと慌てて視線を上げる。

………。

どうやら起きたわけではないらしい。
が、むにゃむにゃと何事か呟いた彼は俺を引き寄せた。
素肌が触れ合って、またドキリとする。
その気恥ずかしいような、微妙な感覚をごまかしたくて、シズちゃんの髪を優しく梳いてみると整った顔がふにゃっと緩められた。
…それに予想外に和んだらしい俺は、ぷっと小さく吹き出して、子供みたいだと笑って目を細める。
そっと、俺を包む腕も撫でてみれば、無意識だとは思うけど、ぎゅうっと抱きしめられて。
少し痛い。けど、なんだか幸せだと、そう思った。
頭を摺り寄せられて、臨也と名前を呼ばれる。
呼吸は穏やかだから、たぶん寝言なのだろうけど。
そんなシズちゃんに、ああ…やっぱり好きだな。と、そう思う。

「…ホント、」

そう、ポツリと呟いて。
俺はくすくすと小さく笑った。












※もうこの温もりを手放すことは考えられそうにないよ。