35.触れて抱き寄せてキスして…それから
※R-18。side:I
どれくらい経った頃だろうか。
前の時みたいにお互いのそれを扱いたり、シズちゃんにあちこち舐めたり噛んだりされて。
それから、シズちゃんが入るところをたっぷり時間をかけて柔らかく蕩けるまで指で慣らしてもらって。
そうして、本当にどれくらい経ったのか分からなくなった頃。
俺の目尻に溜まった涙を舐め取ったシズちゃんが小さく熱い息を吐き出した。
「っ…ふぁ」
くちゅ、と随分卑猥な音を立ててシズちゃんの指が抜かれる。
ローションと先走りの混じった液でドロドロになるまで慣らされたそこをシズちゃんの目に晒してるのだと思うと、恥ずかしさのあまりまともに彼の方を見ることもできやしない。
変な声が漏れないよう噛み締めていた唇をシズちゃんの濡れた指がなぞっていく。
「臨也、血が出るから止めろ」
「んっ、ぅ」
ヤダと首を振るけど、もう一度名前を呼ばれて、渋々口を開く。
するりと滑って口内に入り込む指先を舐めると、ほんのりと甘苦いローションの味がした。
ぺちゃぺちゃと音を立てて舐めてやれば、シズちゃんがごくりと喉を鳴らす。
「臨也、そろそろ挿れても大丈夫か…?」
「…たぶん、大丈夫、だよ」
正直な話、童貞のシズちゃんがここまで我慢強いとは思っていなかった。俺を傷つけないようにって一心で我慢してくれたのだろう。不覚にも感動してしまうくらい、シズちゃんは優しくしてくれている。
だから、焦らそうなどという気はまったく起きず、俺は手探りでサイドボードから取ったそれを手渡した。
「?」
「ゴム…付け方しらないとか、言わないよね…?」
「あ、いや知ってるけどよ…」
「な、に…っ、ん」
「生でしたら、ダメか?」
「………」
ダメって言うか、衛生面とか色々問題あると思うんだけどな。まあ、一応抱かれる側になる可能性は考えてきれいにはしてきたけどさぁ…。
「…つけたくない、の?」
「…臨也の中に出してぇ」
「…………」
何言っちゃってんのこの人…。
そう思うけど、あまりにも真剣な目でそういうこと言われちゃうと、状況が状況だけにダメとは言い難い。ああもう困った。俺、絶対この男に甘すぎる気がする。
「…いいよ」
そう言って溜息ついて、シズちゃんの手からゴムのパッケージを取り上げて。
それで、シズちゃんの首の後ろに手を伸ばして引き寄せてキスまでしてやった俺はやっぱりシズちゃんに甘すぎるのかもしれない。
「っ、いざや」
やけに可愛い舌足らずな声で俺を呼ぶくせに、シズちゃんの目はしっかり雄のそれだった。
興奮して熱を帯びた目が、それでも本当にいいのか?と問うている辺りは、まあシズちゃんだなと思ったけど。
仕方ないなとこくりと頷いた俺に、シズちゃんが手を伸ばしてくる。
くぷ、と水音を立てて散々慣らされた後孔に指が侵入した。
「ッ…あっ」
二、三度引っ掻くように中を掻き回した指があっさり出て行って。
かわりに、ぴとりと後孔にくっつく熱。
その感触に、ついつい身体が強張ってしまう。
これからこの熱が身体の中に入り込むのだと思うと、本音を言えば怖い。
でも、シズちゃんが欲しいのも本当で。だから、息を吐いて、シズちゃんの頬を撫でて、言った。
「きて、しずちゃん」
応えるように、熱くて硬いそれが後孔の縁を何度か擦って、それから侵入してくる。
「う、ぁっ」
痛い、熱い。
ぐっと入り込むシズちゃんのそれは恐ろしいほどの圧迫感だった。
じりじりと入り込むそれに内臓を押し上げられて、息も出来ずに勝手に身体が震える。
「っ…キツ」
「ヒ、ぁ…ッ……ぁあ」
「っ…力、抜け…臨也」
「うぅ…っ…むり」
ぐちゅっと音を立てて、大量に使われたローションが押し出されて肌を伝って。
俺の腰を掴んだシズちゃんの手に力が込められた。
「あ…いっ…や、ぁああ」
強い力で押し込められて、先端が中に入ってくる。痛い、苦しいとうわ言のように小さな悲鳴を上げる俺を宥めながら、シズちゃんは根気強くゆっくりと一番太い部分を挿入する。
そこまでくればあとはスムーズだ。
そのままずるずるとローションの滑りに助けられて中の壁を擦り上げながら、シズちゃんは俺の中に性器を全部収めきった。
「うっ…ぁ…はっ……くる、し」
「…悪ぃ。大丈夫、か?」
「ん…ぁ…ッ……ちょっと、待てば…たぶんへいき…ッ」
ぐちゅ、と根元まで押し込まれたシズちゃんのそれに。
ぞくりと頭の芯が痺れるような感覚が走る。
シズちゃんが俺の中にいるのだと思うと、痛みは強くてもそれだけで気持ち良くなれそうだった。
背中を宥めるように擦る手が逆の効果をもたらして、息を詰めて身体を震わせた俺に。
シズちゃんはまた悪いと口にする。
「…しず、ちゃん…っ」
「痛くないか?」
「ちょっと、だけ、だから、へいき」
嘘だ。
ホントはかなり痛い。初めて男を受け入れたそこは異物感と痛みでじくじく疼いていた。
でも、シズちゃんの辛そうに寄せられた眉と耐えようとする顔を目にしたら、これ以上待たせておくのは可哀相な気がして。
だから、息を吐き出して極力力を抜いて、シズちゃんの頭に手を伸ばして、髪を撫でる。
「うごいて、いいよ?」
「でも…」
「いいから」
いいんだよ。遠慮なんてしないでさ。
俺はシズちゃんが欲しくて、シズちゃんも俺が欲しい。
互いの想いが一致するのがどれだけ嬉しいことか分かる?
ねぇ、シズちゃん。俺は、君としたいんだよ。
君とがいいんだ。
ねぇ、と甘い声で俺はシズちゃんに囁きかける。
「つづき…しよ?」
甘えた声の中に含ませた誘惑の響きは、どうやら十分な効果があったらしい。
ぐっと後孔の圧迫が増して、奪うような口付けを与えられて。
俺は耐え切れずにきつく目を閉じて、あとはシズちゃんに全てを委ねた。
※しようよ…気持ちいいこと、ぜんぶ。