30.覚悟を決めろ











side:S





何か臨也について聞きたいことはないかい?
そう新羅に問われて、俺は首を振った。
訊きたいことは、臨也から直接聞く。
そう答えれば、新羅は苦笑してそれから、じゃあひとつだけと言った。

そして、俺は教えられた携帯の番号を見つめている。

「…かけても、出ねぇよな」
何となくだが、臨也は俺の電話番号を知っている気がする。
そして、俺だと分かれば絶対に出ないだろう。

「あー…クソ、どうすっか」

追いかけると決めた。
告白すると決めた。
でも、実際は何の覚悟もできちゃいないんだ本当は。
「でもよ、やっぱ最後なら、言っときたいしな…」
これで終わるなら、言わぬままで終わるよりははっきりと告げておきたい。
それに、できることならちゃんと直接会って言いたい。
そう思って、俺は携帯は最後の手段としてしまっておくことにした。

「…そもそも、ホントは諦めたくねぇんだよな」

諦めたくはない。
それが本音だ。
別に臨也と恋人になるとか、そんなことは端から期待しちゃいない。
告白して得られるのは自己満足くらいだろう。
そこまで分かっていて、俺は告白しようとしているのだから、結構な大馬鹿者なんだろう。
「…ああ、でも諦める必要はねぇのか」
臨也と一緒にいることは出来なくなっても、借金がある限りは俺は臨也のものなんだから、繋がりはたぶん残る。
…返さなくてもいいと言われてしまうかもしれないが、それは知ったことじゃない。
俺は借りたものはちゃんと返すべきだと思うしよ。

「…そう考えりゃ、まだマシか」

姿を見ることくらいはたぶん出来る。
それに、たぶん側には居られなくても思うことくらいは許されるだろう。

「それで我慢するしかねぇよな」

結果がどうあれ、俺の気持ちが消えるわけじゃねぇ。
そう考えたら少し気が楽になったように思えて。
俺はポケットに突っ込んだ携帯を一撫でして、それから勘を頼りに歩き始めた。

ぐだぐだ考えるのは性に合わない。
今までが考えすぎだったんだ。
だから。












※もう、決めた。