25.思わぬところに伏兵

















往診の帰り道。
新羅は見知った顔を見つけて足を止めた。
金髪のバーテンダー。他の場所ならばともかく、池袋ではそれは彼のトレードマークだ。

「静雄!」

声をかけると振り返る。
青いサングラス越しに新羅の姿を認めた静雄は「よう」と手を上げて応じた。
元気そうで何よりだ。
新羅はそう思う。
臨也が彼を引き取った――臨也は買ったと表現したが――と聞いた時は、それなりに持っているつもりの友情を発揮して臨也に釘を差したりしたものだが。

「やあ、今日はいつもの上司と一緒じゃないのかい?」
「あ、ああ。今日は休みなんだよ。それで、ちょっと…人探しをだな…」
「人探し?」
「ああ」

人探しねぇ。そう考えて、そう言えばと思い出す。
今朝方、倒れたと連れ込まれた患者…というのもおこがましい男の姿を脳裏に描いて。
新羅は静雄に問う。

「君が探しているのってひょっとして、臨也かい?」
「っ!…どこにいるのか知ってるのか!?」

当たりか。と、そう思いつつ頷く。
「うちにいるよ。今は…たぶんまだ寝てるんじゃないかな」
帰るとうるさいので薬で無理矢理眠らせたのだ。まだ寝ているだろう。

「…そうか」
「うちに来るかい?」
「あー…いいのか?」
「うん。いいよ」

一瞬迷って、それから覚悟を決めたように強く頷いた静雄に。
新羅は、部屋で寝ている臆病者を思い出して笑う。
なるほど、悪くはないのかもしれない。
あのタチの悪い小心者にはもったいない気もするが、静雄がそれでいいというなら、案外悪くない取り合わせであるかもしれない。
じゃあ行こうかと促して。
新羅は静雄と共に歩き出した。












※これが吉とでるか凶とでるか興味があった。