24.エゴイストの純情











side:I





俺は、もう何度目になるか分からない溜息を漏らす。
たかが2週間。
されど2週間だ。
シズちゃんから離れて、冷却期間を置こうと思ったのは俺。
その間のシズちゃんに関しては子飼いの連中から報告を受けている。
でも、シズちゃんそのものにはもう2週間も会っていないのだ。

「シズちゃん」

ぽつりと呟いて。
会いたいな、と心の中で続ける。
会えない2週間は、冷却どころか逆に思慕を募らせる結果になっている気がしてならない。大誤算だ。

「折原、いい加減素直になったらどうだ?」
「…うるさい」

声をかけてくる男を睨みつけて。
俺は目の前のパソコンのキーをに八つ当たり気味に強く叩いた。

「…荒れてるな」
「うーるーさーいー」

黙れ喋るな。そんな思いを込めて再度睨むと、やれやれと肩を竦めて首を振る。本当にムカつく男だ。長い付き合いだが相性は最悪。一方的に遊ばれるだけの俺としては、非常に不愉快だ。

「大体お前が悪いんだろう。酒に酔ってましたなど言い訳にもならないな」
「…うるさい…っていうか、なんで知ってんの」
「さあな?俺がお前より優秀だからじゃないか?」
「………ムカつくんだけど」
「お前がムカつこうと一向に構わないが……まだ素直に『君の魅力に勝てませんでした』とでも言った方が良かったんじゃないのか?」
「キモい。俺はそんなこと言わないし、そんなこと言ったらシズちゃんに嫌われるだろ」
「決め付けは良くないな」
「うるさい」
「折原」
「うるさい、九十九屋」

もう聞かない、と耳をふさぐ仕草をすると。
男――九十九屋はくっと笑って、言った。

「しかし、お前が平和島静雄に恋するとは、世の中はまだまだ面白いことばかりだな」
「…………」

うるさい。俺だってそう思うよ。俺が恋とか、ちょっとした笑い事だ。
…でも、好きなんだ。
視線を落とす俺に、九十九屋が頭を撫でてくる。
気安く触るなと振り払っても良かったが、気持ちいいので何も言わないでおいた。

「素敵で無敵な情報屋さんも形無しだな」
「………」
「本当に実行するのか?」
「…するつもり」
「後戻りは出来ないぞ?」
「分かってる」

そうか、と頷く気配があって。
それきり、俺たちは黙り込んだ。
シズちゃんを逃がさないための最後の仕掛け。
それを実行すれば、もう後戻りは出来ない。一生俺はシズちゃんに嘘をついて生きることになるだろう。
でも、それでも。
俺はシズちゃんを手放したくなかった。












※ごめんね、シズちゃん。

オリキャラか九十九屋かで迷っていたところ「じゃあ九十九屋で」と言われたので九十九屋さん登場に。この話では九十九屋さんと臨也さんはわりと普通に友人をしているようです。