23.なんで世界は、











side:S





臨也がしばらく家を空けると言って。
最低限の荷物だけ持って姿を消して、もう2週間が経つ。
その間一切音沙汰なし。
行き先も告げずに出ていった臨也に、俺はただ待つことしかできなかった。

「…せめて、携帯の番号くらい聞いとくべきだったな…」

ほぼ毎日顔を合わせていたから、そんなことすら思いつかなかった。
間抜けな自分を心の中で罵って。
俺はぼんやりとソファに座っていた。
家に帰って飯と風呂を済ませたら、後は臨也の定位置のそこに座り込んで、ただただあいつの帰りを待つ。
どこかの忠犬かよと嘲る自分の声がした気がしたが、それでも毎日そうしている。

「…臨也」

自分がもう少しうまく立ち回れていたなら、臨也は出ていかなかっただろうか。『出ていけ』と言われなかったのをいいことに居座っているが、ひょっとしたら出ていった方がいいのだろうか。
ぐるぐると暗い思考ばかりが渦巻いて、溜息をついてソファの背にもたれた。

「…会いてぇな」

相手の存在がどれほど大きいのか。
この2週間で十分思い知った。
シズちゃんと俺を呼ぶ声と、優しく撫でてくれる手。
臨也という存在が、愛しくてたまらない。
だけど。

「探して、謝って…それで元通りになれればいいけどよ」

もう無理だ。
ああチクショウ、と呟いて。
俺はきつく目を閉じた。












※いつだって、本当の願いは叶わない。