19.瓦解
※R-18。










side:S





お互いアルコールが入っていて、多少…理性が飛んでいたのかもしれない。
伸びてきた臨也の手を拒めなかった理由についてそう言い訳しながら。
俺は臨也の服の裾から空いた方の手を差し込んで、滑らかな背を撫でた。
咎める気がないのか、臨也はそれに対して文句を言ってこない。
ん、んっと鼻にかかった甘い声を上げて。
目を閉じたまま快楽を追いかけるように手を動かしている。
微妙に揺れる腰が艶めかしくて、ついごくりと喉が鳴った。

「て、め…どこでこんなの覚えたんだよ…っ」
「どこって、高校の頃に、ちょっと、ね」
「…っ」
「しず、ちゃんも、手、動かしてよ」
「っ…わかってる…」

さっき手を誘導された時に教えられた通り、二人分の先走りで濡れたそこを加減しつつ擦り上げる。

「ん…ぁ…きもち、い」
「っ」

確かにいい。
臨也の手が俺の手に重なって一緒に二人分のそれを擦り上げて。
ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てるのが、聞こえる。
やべぇ、さっきから思ってるけど、やっぱり気持ちよすぎる。
やってることは自慰の延長に過ぎなくても、好きなヤツが――臨也が俺の手に反応しているのが、たまらない。
快楽に蕩けた顔を見せる臨也に、どうしようもなく興奮していた。

「しずちゃん?」
「っ、わりっ」

臨也の表情に集中しすぎて、また手の動きが鈍くなっていたのだろう。うっすらと目を開けて俺を見た臨也が、怪訝そうに声を掛けてくる。
…見なきゃ良かった。目の毒なんてものじゃない。いつもは強い意志を宿した赤い目が、とろりと涙で潤んでいて、誘っているみたいな半開きの口に吸い付きたいと思ってしまった。
悟られないように慌てて手を動かすと、臨也が小さく喘ぎ声を漏らす。

「あ、っ」
「っ…ぅ…」

向かい合わせに互いのものを押し付け、しごき合って。
AVなんかそっちのけで、俺は臨也に集中していた。

「シズちゃん、も、おれ、だめ」
「っく…俺も、だ」

息を詰めて、ほぼ同時に欲望を吐き出して。
俺は荒い息を吐き出しながら、ぐったりと身を預けてきた臨也を抱き止める。

「あー…大丈夫、か?」
「ん、だいじょうぶ。だけど、気持ちよかったけど、つかれた…」

汗で張り付いた髪を払ってやると、臨也が気だるげに見上げてきた。

「きもち、よかった?」
「ああ」

良かった、と頷くと。
臨也はそれは良かったねぇ、と呟くように言って。
そのまま、目を閉じてしまう。
それを眺めながら、俺は、今更ながらにやってしまったと後悔し始めていた。
いくら臨也から仕掛けてきたとはいえ、やはり、まずかった。
アルコールが入っていたとはいえ、越えてはならないものがあったのだ。
一度触れてしまえば、次が欲しくなるのは分かりきっていて。
俺は、これから先、どうやってこの気持ちを誤魔化せばいいのだと本気で悩むことになった。












※一度決壊してしまったら、あとはもう。