17.よりによってそれか!










side:S





その日、臨也は珍しく酒を飲んで帰ってきた。
もっとも、その時はまだほろ酔い程度で、本格的に酔ったのはその後。俺を誘って飲み始めてからだったのだが。
もし、そこで飲むなと止めていたならば、あるいは俺たちの関係はまったく別のものになっていたのかもしれない。





それを手に、目を瞬かせた酔っ払い――もとい、臨也に。
俺はうわっと大声を上げる羽目になった。
「臨也それ寄越せ!」
急いで取り上げようとするが、臨也はおもしろそうに目を細め、口の端をつり上げて笑っただけで。
ひょい、と俺の手を避けてしまう。
さらに、手の中のものをわざとらしくしげしげと眺めて見せる辺りに、性格の悪さが滲んでいる気がする。

「あははっ、シズちゃんこういうの好きなんだ?」
「ち、ちがっ…それは職場の先輩に借りたんだよ!」
「へぇ、借りたんだ」
「あああぁ、違ぇ!いらないって言ってんのにいいから見てみろよって言われただけでっ」
「ふうん。まあ、俺も男だし分からなくはないけどさぁ」

手の中のそれをぷらぷら振って。
臨也は楽しげに笑った。

「そうかぁ、シズちゃんは年上好きなのかぁ」
「ち、がわねぇけど!関係ないだろ!?」
「ははっ、なんて言うか、いかにもDTっぽい反応だなぁ」
「うるせぇ!」

怒鳴ってそれを取り上げようとしても、やつは酔っているとは思えない軽い身のこなしでヒョイヒョイとかわしてしまうので捕まらない。
くそっと胸中で舌打ちした俺に、臨也はニヤニヤ笑いを消さないままだ。

「まぁ、そうだよね。シズちゃんだって健康な成年男性なんだから溜まりもするよねぇ」
「だ・か・ら!」

違うっつってるだろうが!と叫ぼうとした。が、それより一足早く、臨也がそれ――アダルトビデオのパッケージを突き出してきて、満面の笑みを崩さぬまま言った。

「一緒に見ようか?」












※――はい?