15.日常の中の嘘










side:S





「おい、ちょっと熱いぞ」
ソファでまどろんでいる臨也の額に触れて。
俺は、仕方ねぇやつだなという表情を作った。
優しく髪を梳いてやると、気持よさそうに目を細める。
「ここのところちょっと忙しかったからだと思うし、大丈夫だよ」
寝起き特有のとろんと潤んだ目でそう言われて、勝手に鳴りそうになった喉に狼狽したが、何とかばれずにすんだ。
「新羅呼ぶか?」
気合いを入れて引き締めて、心配そうな顔を作って、問う。
「いらないよ。平気。ちょっと寝不足と栄養失調気味なだけだから、いつも通りの生活に戻せば治るよ」
「…飯、粥とか消化に良さそうなものにするぞ」
「うーん…せめて雑炊がいいなぁ」
「…分かった」
くしゃりと髪をかき混ぜて。
俺は昼飯を作るためにキッチンへ向かった。

俺は、あの日から嘘をつき続けている。
自分を偽り、臨也に対して今までと変わらない態度をとって。
なれ合いは嫌いだというくせに、実は寂しがりなあいつをさりげなく甘やかして。
自分の居場所をあいつの中に作ろうとしている。
自分を偽ることに慣れていないから、最初はぎこちなかったが、今はさらりと普通に表情を作れるし言葉もでるようになった。
自分をごまかす嘘と、臨也に対する嘘。
些細な嘘だ。それでも嘘は嘘。
嘘であると自覚してつく嘘は、思ったよりも俺を落ち込ませる。
だが、それを悟られるわけにはいかなかった。
聡い臨也に気付かれないように、細心の注意を払って。
それでも、












※積み重ねていく小さな嘘が、苦しかった。