11.手を伸ばすには遠すぎる










side:S





俺と臨也の関係は、結局のところ、金で買われたものでしかない。
臨也は人間観察が趣味で、俺は臨也にとっては現在一番興味を惹かれる観察対象だというだけだ。
そこに、それ以外の感情が入り込む余地はない。それは臨也の態度からも明白で。
だから。

「少なくとも、今は言えねぇよ」
「静雄ー?どうしたんだ?調子悪いのか?」
「あ、いえ、何でもないっす。次行きましょう」

少なくとも、今の俺にあいつに告白する資格はない。
『シズちゃんってさぁ、女の子に興味ないの?好きになったこととか、ないの?』
蘇る言葉に、溜息が漏れる。
興味がないわけじゃない。なかった。
でも、今の俺の頭を占めているのはそれを問うた本人の方で。
昨日、あの後臨也を腹に張り付かせたままひたすら臨也のことだけ考えて。
出てしまった答えに、俺は同時に自分の立ち位置を確認させられてしまったのだった。
臨也にとっての俺は、ただの観察対象。良くてペットだ。
歪んだ愛を人間に向けるあいつが、興味本位で拾っただけの俺にそれ以上の感情を抱くとは考えにくい。
つまり、これは完全に俺の片思い確定で。

「あー…クソ」

せめて、できるだけ早く借金を返して。あいつと対等な位置に立って。
それからじゃなきゃ、この気持ちを伝えることはできない。
今のあいつに今の俺が告白しても、あいつはへぇとか言って笑って、なら俺と付き合ってみる?とか軽く言いそうな気がするのだ。

「好きって、言ったら。そこですべてが終わる気がするんだよなぁ」

告白してしまったら。
臨也の興味が、そこで俺から離れる気がする。












※だから、俺は嘘をつく。