13.探す
※『猛獣』設定。来神時代。















「よう、セルティ」
『静雄』
「臨也の奴見たか?」
『いや、今日はまだ見ていない』
「そうか」

くそ、と舌打ちする静雄。
どうやら撒かれたらしい。

「…あのノミ蟲野郎、ちょろちょろちょろちょろ逃げ回りやがって」
『し、静雄落ち着けっ。とにかくそれを離して深呼吸だ!』
「あ…わりぃ」

握り締めた鉄パイプ…一体どこで拾ったものなのか…をただの鉄屑に変えた静雄は、それを放り出し深呼吸する。

「あー…あの野郎ぜってぇぶん殴る」
『………』

ぜんぜん落ち着いていないらしい。
まあそれもそのはず。10日近く延々逃げ回られ続けているのだ。もともと短気な静雄がここまでキレずにいるのは奇跡に近い。

『なぁ静雄』
「ん?なんだ?」
『お前は臨也のどこがそんなにいいんだ?』
「あ?」

きょとりとセルティを見つめた静雄は、次いで首をこてんと横に倒した。

「いや、どこがって言われてもよぉ」

うーんと首を捻って唸る。
静雄にとって臨也を好きなのは至極自然で当たり前のことなのだ。…まあムカつくのも事実ではあるのだが。

「あいつと俺が幼馴染だって話はしたよな?」
『ああ』
「俺は昔あいつに酷いケガをさせたことがあってよ。あいつ、それでも俺の側にいたいって言い張りやがって…たぶん、それが一番の理由だ」
『……』
「家族以外で俺から離れていかなかったのはあいつだけだったからな。だから、執着したんだと思う」
『…そうか』
「でもよ、それとあいつを好きって気持ちは別もんだ。あいつに触れてるとすっげぇこの辺が暖かくなるんだよ」

この辺、と胸の辺りを指す静雄。

「あいつ以外じゃこうはならねぇ。側にいるだけで満たされて嬉しくて……ここで留まれれば臨也に逃げられることもなかったんだけどよ。もっともっと触りたい、側に行きたいって気持ちばっか強くなって無理だった」

そう言ったあと急に沈黙した静雄に、セルティはどうしたのだと首を捻る仕草をする。

『静雄?』
「ん、ああ。わりぃ」
『?』
「セルティ、俺は――」

ふっと頬を緩ませて、静雄は澄んだという表現が似合いそうな笑みを浮かべて、言った。

「俺にとっては、最終的には臨也がすべてなんだよ」

あいつ以外じゃ満たされない、と独白めいた言葉を吐き出して。
真剣な目をした彼は視線を街へと巡らせる。

「じゃあそろそろ行くわ。臨也を見かけたら教えてくれよ」
『…わかった』

とりあえず学校に戻ってみるかと言いんがら去っていく静雄の背を見送って、セルティは小さく肩を竦めてコシュタ・バワーに跨る。
ようやく、新羅の言った言葉が彼女にも理解できた気がしていた。












※ノロケただけの静雄さん。