12.決める
※『猛獣』設定。来神時代。















臨也と静雄の鬼ごっこが始まってから早1週間が経とうとしていた。
つまり、臨也が静雄を避け始めてからは10日近く経つことになる。

「………」
「臨也、大丈夫?」
「…大丈夫じゃない。なんなんだよあのしつこさ。もう最悪」

うううと唸って、臨也は机に突っ伏した。
どうやら朝すでに静雄と出会い逃げ回った後らしい。
静雄を撒いてなんとか教室に顔を出した臨也だが、ここ1週間は数時間居られればいい方という状態が続いている。

「さすがにシズちゃんの出席日数が心配だよ」
「うーん…確かにそうだね」

困ったものだが今の静雄に何を言っても無駄だろう。
そう思うから放置するしかなかった。

「ねぇ新羅」
「なんだい?」
「俺、シズちゃんと付き合おうかと思うんだよね」

おや、と新羅は眉を跳ね上げる。
その表情にどこかバカにされた気分になって、臨也はわずかに眉間にしわを寄せた。

「君がその気になるとはどんな心境の変化だい?」

そう問うてくる新羅は興味津々で。
面白くないなぁと考えながら口を開く。

「心境の変化じゃなくて、そろそろ限界なだけ」
「…思ったより早かったね」
「うるさい。仕方ないだろ、シズちゃんの姿はうんざりするほど見てるのにろくに喋ってすらいないんだよ?」

新羅を睨んで溜息をついて。

「…本当は、もう少し考えた方がいいと思うけどさ、今の状態は、こう…もやもやして落ち着かなくて嫌なんだ」
「結論は出たのかい?」
「…どうかな」

難しいくてさ、と呟いて、臨也は視線を逸らした。
結論と呼んでいいレベルの答えは出ていない。
逃げて逃げて、その間に考えてみても、臨也には静雄の言う『好き』を理解することはできなかった。
わかるのは、静雄はおそらく諦めないだろうということと。自分もそうでない意味ならば静雄が好きということと。ならそれでもいいかということで。
触れられない現状に耐え切れなくなっただけだと言えばそこまでだ。ただ、自分は静雄に恋はしていないが、それでも彼の望む関係が嫌というわけではない。あの腕の中は心地いいし、慣れていないぎこちないキスも嫌いではない。
ならいいじゃないかというのが臨也の出した答え。
それでいいのかと真剣な静雄に失礼じゃないかと、考えなかったわけではない。散々迷って、だが、誰になんと言われようと今の臨也にはこれ以上の答えは出せなかったのだ。
はふ、と臨也は溜息をつく。覚悟は決めた。臨也が新羅にわざわざ言ったのは自分の逃げ場をなくすためで。あとは、まあ、数時間後に彼の世話になる可能性を考慮してのものだった。ただで折れてやる気は臨也にはなかった。

「俺、シズちゃんに会ってくるよ」

発した言葉に、新羅は目を瞬かせて。
臨也の表情に気付いて程ほどにねという言葉は敢えて飲み込んで。
それから、「そうかい」と苦笑混じりの笑みを浮かべた。












※ようやく臨也さんの中では完全決着。