7.望む
※『猛獣』設定。来神時代。















平和島静雄は折原臨也が好きである。
ただし、その好きの意味は最初に出会った時から考えると確実に変化している。


変わり始めたのは再会してしばらくしてからのこと。
気付いたきっかけはひどく単純だった。
その時臨也は門田と楽しそうに話し込んでいて。
別に何ということもないはずのその光景に、だが、静雄は酷く苛立った。
その苛立ちの理由がわからず何とはなしに新羅に相談して。
『それは嫉妬だね』
そう断言した新羅に静雄は目を瞬かせ言われた言葉を脳内で反復した。
もちろん、新羅はその感情を恋と断定したわけではなかったのだろうが、それは結果として静雄の自覚を促す言葉になった。
しばらく時間をかけてゆっくり考えて。
そうしてようやく、静雄は時折臨也に感じていた小さな苛立ちや奇妙な欲求の正体を理解したのだった。

――平和島静雄は折原臨也に恋をしている。
それは、静雄にとって間違いようのない事実だった。



「あー…チクショウ。どこにいやがるんだあの野郎」

臨也を探して池袋を走り回って。
それでも見つからない相手に苛つきが増す。


今の平和島静雄という存在は臨也によって確立されたと言ってもいい。
静雄は臨也のために自分の感情を抑える努力をしたし、その一方で臨也を守れる人間になりたくて自分を鍛えることもしてきた。
臨也は静雄にとってある意味ずっと絶対的な存在だった。
もちろん、今では臨也がかなりどうしようもない人格の持ち主であることも知っているし、何度も騒動に巻き込まれて嫌な思いもしている。
だが、それでも静雄の中での臨也の位置は不動のもので。
度を超えた執着が行き着いた先が独占欲にまみれた愛情だとしても、静雄はそれでいいと思っていた。
折原臨也が好きだ。
それが、静雄にとってすべてだった。
それがすべてで、そして、それ故に今以上の関係を望んでいる。
最初は時間をかけてゆっくりと臨也の気持ちをそういう方向に持っていくつもりだった。
だが、触れ合うたび気持ちは募って、欲望が育つのにさした時間はかからなかった。
触れたい、口付けたい――抱きたい。あの細身の身体にくまなく自分の所有の証を刻みたい。
募る想いを制御できなくなるのもあっという間で。
だからこそ結局我慢しきれずに先走った結果、今、臨也に逃げ回られてしまっているのだ。


「ああクソッ、逃げんなよ臨也」

でないと酷いことをしちまいそうだ。
そう思って、静雄は大きく息を吐き出して高ぶった感情を押し出そうと努力するしかなかった。












※確実にシズ→→→←イザくらいな二人。