4.相談する
※『猛獣』設定。来神時代。















――新羅と臨也の会話からさらに数日。


「ドタチン、話を聞いて欲しいんだ」

昼休みの屋上でそう言った臨也に。
様子がいつもと違うことに気付いていた門田はただ頷いた。

「静雄と何かあったのか?」
「…ドタチンも新羅と同じこと言うんだね」

そんなに俺って分かりやすいかな?
そう訊く臨也に、首を振る。

「お前が俺に相談するとしたら静雄のことだけだろうからな」
「そうかな?俺結構ドタチンのこと頼りにしてるけど?」
「それでもお前は誰かに相談したりしない」
「…そうかな」
「ああ」
「ドタチンが言うならそうかもね」

くすりと笑って、それから臨也は困ったように眉を下げた。

「シズちゃんに告白されたんだ」
「…そうか」

静雄の想いを門田もなんとなく気付いていた。
だから、今は頷くだけにとどめる。

「俺さ、シズちゃんのこと好きなんだ。でもそれは恋じゃないと思うんだよね。でも、友情とかとも、たぶん違う」

分からないんだ、と呟いて。
臨也は空を見上げた。

「でも好きなんだよ。絶対に手放したくない。俺だけ見てて欲しい。俺以外を選ぶなんて絶対許せない」

独白めいた告白をして、その独特の色の瞳がもう一度門田に向けられる。

「ねえ、これってどういう気持ちなのかドタチンには分かる?」

それは恋なんじゃないのか?と思ったが、最初に否定されていたので返答に困まった。
だが、今の話を聞いた限り、確実に恋、もしくはそれに極めて近い感情だろう。
さてどう答えるべきか、と門田は小さく溜息をつく。

「お前は静雄が好きなんだろ。だったら、それでいいんじゃないのか?」
「いいのかなぁ。だっておんなじ気持ちじゃないのに付き合ったらシズちゃんに悪くないかなぁ」
「それは…難しい問題だな…」
「そうだよね。だからさ、とりあえず逃げるしかないんだよ俺は」
「は?逃げる?」

そう言えば。と、門田はそこでようやく気付いた。
ここ数日、臨也はずっと静雄と行動していない。

「なんでそんなこと――」

問おうとしたが、それより先に。
がんっと鈍い音を立てて、階下へと続くドアが吹き飛ばされた。

「シズちゃん」
「静雄…」

そこには、予想と違わぬ相手がいた。

「いぃざぁやぁああ、手前ぇいつまで逃げ回る気だっ!」
「やば」

すばやく身を起こし、臨也は門田に手を振る。

「さっきの答え!」
「…は?」
「俺は俺を試してるんだよドタチン!だから逃げるね!」

それだけ言うと。
迫ってくる静雄の手をひょいと避けて、臨也はあっという間に視界から消えてしまった。

「手前っ待ちやがれ!」

ばたばたと静雄がそれを追いかけて、すぐに屋上は静けさを取り戻す。

「…いや、意味分かんねぇんだけどな」

気になるだろうが。
残された門田は戸惑いの表情を浮かべたまま、一人呟いた。












※傍迷惑。