3.探る
※『猛獣』設定。来神時代。ぴとり、と冷えたジュースの缶を首にくっつけるが、相手はちろりと視線を動かしただけだった。
それになんとなくがっかりしながら、新羅は缶を臨也の横に置く。
「新羅、なに?」
問う声はいっそ静か過ぎるくらいに静かだった。
それが臨也がいまだ葛藤の中にいることを示している。
「静雄から逃げてるんだってね?」
「ああ、シズちゃんから聞いたの?」
「うん。すっごく機嫌悪かったよ」
「……そう」
反応は薄い。…ように見えるが、缶を握る指に力がこもったので、動揺したことは新羅にも伝わった。
「なに考えてるんだい?自暴自棄…ってわけでもなさそうだし、梟盧一擲というほどの行動でもない。何がしたいのか全然見えないだけど」
「別に。少し、考える時間が欲しいだけだよ」
「考えるって…まさか静雄から離れようとか考えてないよね?」
ぎょっとして問いかけると、呆れたような一瞥。
「それこそまさか、だよ。ありえない」
きっぱりと断言した臨也に、新羅はほっとする。
もしそんなことを臨也が言い出したりしたら、静雄がどんな行動に出るか想像できない。
最悪の事態にはならないだろうと確認して、胸を撫で下ろした。
「せっかくやっと一緒にいられるようになったのに離れる気は絶対ないから、そこは安心していいよ」
「じゃあ、なにを考えてるんだい?君が静雄をそういう意味で好きになれるかってのなら、考えるだけ無駄だと思うんだけど」
「…なんでかな」
「だって、君は恋なんてしたことないだろう?こればっかりは頭で考えたって答えは出ないよ?」
それよりも付き合っちゃった方が早いと思うんだけど。
付き合えば、たぶん臨也は静雄に絆されていくはずだと、そう思いながら口にするが。
「…簡単に言ってくれるね」
鬱陶しそうに睨まれて、新羅は困ったなぁと苦笑する。
どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。
「他の人間に告白されたならそれでも良かったかもしれないけどね。シズちゃんはダメ」
「なんでだい?君はそういう意味でなければ静雄が好きなんだろう?」
「だからだよ。だからダメなの。ああもういいだろ!」
ぎろりと睨む臨也はもう新羅の言葉を聞く気はないらしい。
「とにかく、俺はしばらくシズちゃんと一緒にいないって決めたんだからそう伝えてよ」
そう言った臨也の声にははっきりと拒絶の色が宿っていて。
新羅は諦めてわかったと首肯するしかなかった。
※探りを入れてみるも失敗。