ちゅっと軽い音を立てて、何度か口付けて。
「泣くほどよかった?」
耳元で甘く囁くと、シズちゃんは身を震わせた。
シズちゃんはこれに弱い。もっとも、言葉を慎重に選ばないと途端に怒り出すから危険だけど。
「いざ、や…」
くったりと力の抜けた身体。
まだ行為の余韻で頬に刷いた朱が、俺の言葉のせいで更に濃くなる。
でも怒るほどじゃないらしい。
…可愛いなぁ、なんて思いながら、唇の感触を確かめるように、もう一度キス。
うっとりと細められた目に気を良くして何度か軽いキスを与えると、シズちゃんは潤んだ瞳を伏せた。
目尻から涙の玉が転がり落ちる。
――すっごくおいしそうだなぁ。
艶かしい表情に、無意識にごくりと喉が鳴った。
咎められるかと思ったけど、そこはシズちゃんだ。俺の予想に反して、腕が伸びてきて引き寄せられる。
求められるまま唇を合わせて何度もついばんだ。
「ぅ…んっ…」
色っぽい声だなぁ。
いつもこうならいいのにね。
「は…いざや、も、むり…」
「ん。わかってるから大丈夫」
俺だって疲れてるし、もうしないよ。
と言って、頬を撫でてあげれば戸惑いながらも擦り寄ってきた。
いやいやいや、煽らないでよシズちゃん。俺だってもう腰がだるいしそんなつもりないのに、やりたくなるじゃないか。
理性の手綱を引き絞って、はあ、と溜息をついて身を起こす。
「…いざや」
「なあに?シズちゃん」
「……」
ねぇ、その無言の要求で何でも通ると思うのやめて欲しいんだけど。
通じるからって言葉を使わないのは、いくら化け物のシズちゃんでもよくないと思うんだよ俺は。
そう思うのに、じっと見つめる目に勝てそうにない俺は、相当重傷だ。
ベッドの中じゃなきゃ、いくらでも無視してやれるのに。
「おやすみ、シズちゃん」
さらりと髪を梳いて、そっと額に口付けて。
俺は抱きしめるようにシズちゃんの背に手を回して、その広い背中を撫でてやった。
※甘えたいシズちゃんと甘やかしたくないけど甘やかしちゃう臨也の話。