恋する怪物 後日談3
※2010年ハロウィンネタの続編。









「ねーシズちゃん」
「ん」

抱き締めてくる相手に体重を預けたまま小さく息を吐く。
付き合い始めて、他愛もない接触が増えた。
特にシズちゃんは俺を膝に乗せるのがお気に入りで、ついでにいうと俺の耳と尻尾も気に入っているらしい。
あんまり弄られるのが好きじゃない俺としては非常に迷惑なんだけど、言っても聞かないので最終的に妥協するしかなかった。

「君ってさぁ」

そこまで言って。
言葉を続けるかどうか迷って、結局口を閉じる。
だって言ったところでどうなりそうにもないし。
そのせいで、満月が近くて普段なら高揚している気分も、今日は少し沈み気味だし。
だというのにその原因はまるきりソレを理解していないときてて、色々空しくなりそうだよ俺。
シズちゃんの肩に頭を預けて。
俺は小さく溜息をつく。
ああもう。なんでこんなに奥手なのさシズちゃんってば。
色々あり得ないだろ。つか24にもなって童貞とかどうなの?
付き合い始めてもう2ヶ月だよ?なのに未だにキスですらガチガチに緊張しているとか、ホントありえない馬鹿みたい。
そう思ったけど、言ったりしたらなんだか落ち込ませそうだし、落ち込んだら鬱陶しそうなので、止めた。

「シズちゃん」
「おう」

呼べば応えるその声が結構好きだとか。
犬でも撫でるみたいに撫でてくる手が不愉快だけど決して嫌いじゃないとか。
シズちゃんから与えられるそれらに嬉しそうに揺れる尻尾とか。
なんだか俺ばっかり君を好きみたいで、不愉快だ。

「…なんだかなぁ」
「?臨也?」
「何でもないよ」

不思議そうな声に苦笑して、そう答えて。
俺は大きく息を吐き出して、シズちゃんの背中に腕を回した。

「好きだよシズちゃん」
「お、おう…俺も好きだぞ」

どもるシズちゃんの声が、シズちゃんの要望で出しっぱなしの獣の耳を擽る。
恋人ごっこじゃないんだから、いい加減覚悟を決めて欲しいんだけどねぇ。
プラトニックとか俺の性に合わないし。
なのに、シズちゃんのペースに合わせて我慢してるとかさぁ…。
キスしてもいいかなんてわざわざ確認するな。するならするで男らしくさっさとしろ。
おずおずと合わせてくる唇の熱を感じながら、俺は随分と気が長くなったらしい自分に呆れ返るしかない。
こんなのがいいとか、ああもうホント馬鹿みたいだ。






※奥手シズちゃんと相変わらず欲求不満な臨也さん。
しかし2ヶ月経ってもまだとかどうなんでしょうね…。