あるいは一つの可能性
※memoログ。猛獣シズイザと津軽×サイケな小ネタ連載。










臨也と入れ替わりで静雄のところに行ったサイケに。
臨也は目を細めてくすくす笑った。

「さぁて、どんな方法にしようかな」

すでに幾つかプランは考えてある。
だが、まだどれを実行するかは決めていなかった。
とりあえず、津軽の部屋にでも行こうか。
そう考えて、臨也は足取りも軽く歩き出す。

「うーん…さすがに津軽に協力してもらうのは難しいだろうなぁ」

頭の中で計画を固めながら、臨也はくくくっと笑った。
楽しくて楽しくて仕方ないという顔だ。
自分と同じなのに違うあの子は、一体どんな反応をするんだろうか。
考えるだけで、楽しくてたまらなかった。

「楽しみだなぁ、楽しみだなぁ、楽しみだなぁ」
















サイケは決して頭が悪いわけではない。
むしろ、プログラムを組んだりするのは臨也よりも早いしうまいと自負している。(これは臨也も認めている)
ただ、それ以外の所謂情緒だとかがあまりにも発達していないというだけなのだ。

「…臨也くんのいうことも、シズちゃんのいうことも、おれにはよくわかんないし」

ぷう、と頬を膨らまして。
サイケはパソコンの画面を睨みつけた。
その間も、手だけは動き続けている。
臨也に頼まれたプログラムを組んでいる最中。こう見えてもこんなパソコンなどとは比べ物にならない高性能な存在である彼は、その電子頭脳では別なことをひたすら考えていた。

「好きって…なにがちがうのかわからない」

結局あの後静雄に相談したものの、サイケは望む答えを得ることはできなかった。
静雄も一緒に真剣に考え答えてはくれたが、それを理解することができなかったのだ。
「“こういうのは理屈じゃない”っていうのが、まずわかんない」
理屈じゃないことを理解するのは、難しい。

「だっておれは」

そういうふうにできてないのに。
と呟いて、サイケはつがるには分かるのだろうか、と考えて、あ、と声を上げる。

「でも、つがるにあった時のは、理屈とかそういうの、考えなかった」

出会って、ただ惹かれた。
あれが理屈でない感情だというのなら――。

「あれ…?…うーん…なんか、へん?」

ふと手が止まったのは思考のせいではなく、組んでいたプログラムのせいだった。
何が原因か。変なプログラムが開こうとしていた。
ウイルスじゃないみたいだけどと考えるサイケが何かアクションを起こす前に。
それは、開かれた。

「――なに、これ」















ありえない、ありえない、ありえない!
だって、こんなこと…っ。
そう、サイケは目を見開いたまま、思った。

「っ」

ありえないと分かっているのに、心臓が痛かった。

「なん、で」

ぽろりと涙が零れて、あとからあとから零れてくる。
エラーか故障としか思えない。
体の機能もすべて制御されているのだから、そのはずなのに。

「おれ、なんで…」

違うと訴える心に、サイケは戸惑った。
そして、悲しかった。
嫌だった。
どうしても、今目の前に映し出されたものを認められなかった。
だって、彼は、おれのなのに。
そう訴える心の悲痛な叫びは、強すぎるショックのせいで声にならない。

「っ…つがる」

震える指先が触れた先。
パソコンの画面は、津軽と臨也の姿を映し出していた。