超短文7題 4
※memoログ。4−1〜4−7まで。









超短文7題4−1 学校


「…暇だね」
「…暇だな」

静雄と臨也は屋上で寝転がり、ぼんやり空を見上げていた。
雲がゆったりと流れていく。

「シズちゃん、暇だよ」
「ああ、暇だな」

それだけ言って、また沈黙。

「さっき授業終わったみたいだし、昼休みだよシズちゃん」
「そうみたいだな」

「…ねえ君たち」

いつのまにやってきたのか、新羅が声をかけてきた。
そのまま歩いてきて、寝転がる二人を見下ろす。
その視線に呆れの色が見えた。

「学校に来てるなら勉強するふりくらいしたら?」
「今日は気が乗らないからパス」
「………パスだ」

(…まあ僕は別にいいけどね)



※『猛獣』設定。
授業をサボって昼寝してたけど途中で目が覚めちゃって授業に戻るのもあれなので暇暇言ってる二人。勉強しろよ。
















超短文7題4−2 告白


「………」
「………」
「………」
「………」
「…ねえシズちゃん」
「…おう」
「…これって、改めて言うとなるとすっごく恥ずかしいんだけど」
「………」
「やっぱりこう、面と向かっては言えないって言うか…」
「…うぜぇ」
「しょうがないじゃん!っていうか、無理無理無理無理、絶っっ対無理!」
「……臨也」
「な、なにさ。言えって言われても無理なものは」
「好きだ」

…………。

「うわあああぁ!言っちゃったよこの人!しかも真顔で!!」
「煩ぇうぜぇ!俺は言ったんだ、手前も言え!」
「無理!」
「言えっつってんだろうがあぁぁ!!」
「ちょ、暴力反対!」
「待ちやがれ臨也あぁぁ!」


(バタバタと二人分の足音が遠ざかる)



※なんでこんなことになったのかは気にしてはいけません。















超短文7題4−3 平行線


「あームカつく。さっさと死んでくれればいいのに」
「はいはい、わかったからさっさと手を出す」
「…痛い」
「捻挫してるんだから当たり前。気をつけないといい加減癖になるよ」
「シズちゃんに言ってよ。毎度毎度わざわざ見つけて追っかけてくるんだから」
「…君がちょっかい出さなければ少しはマシになるかもよ」
「無理。今更だし何より逃げるみたいで嫌だね」
「そうかい」(それが執着だって頭ではわかってるだろうに)
「痛い」
「痛くしてるんだよ」
「…なに怒ってるのさ?」
「君たちのその鈍感さが馬鹿馬鹿しくてね」(さっさと気付けばいいんだ)
「?…シズちゃんはともかく俺が鈍感ってどういうこと?」
「わからないならいいよ」
「感じ悪いよ新羅」
「君に愛想よくしたってしょうがないでしょ」
「………。…ああクソ、シズちゃんの奴ホントさっさと死んでくれないかな」

(静雄も似たようなこと言ってたって言ったらどんな顔するのかな)



※交わらないけど離れてもいけないという話。















超短文7題4−4 嘘つき


「シズちゃんの嘘つき」
「………」
「俺、結構楽しみにしてたんだよ?」
「………」
「なのに勝手に食べちゃうとかありえないよ。昨日食べないでねって言ったらわかったって言ったのに!」
「…わりぃ」
「悪いで済むわけないよね。っていうか済まさない。シズちゃんの馬鹿、単細胞!大体君っていつもいつも――」
「……だから悪かったっつってんだろうが」

謝るが罵詈雑言が返るだけで。
しばらくは反省して黙って聞いていた静雄だったが、その文句が高校時代の話にまで遡るに到った辺りでついにキレた。

「……ッ…だああぁうっぜぇぇ!」

…あとは、まあいつも通りの展開だ。



※いろいろレベルが低い。このお題は全然思い浮かばなかった。















超短文7題4−5 誕生日


「臨也、これやる」
「なに?」
「…今日は手前の誕生日だろうが」
「あー…そうだったね。でもさ、シズちゃんが俺にプレゼントとか普通にキモい。どこかで頭打った?いや、頭打ったくらいでシズちゃんがどうにかなるわけないか。じゃあ、新羅に変な薬でも飲まされたとか?」
「い・い・か・ら・あ・け・ろ!」
「わお、こわーい」

はいはい仕方ないな。そう言って、きれいにラッピングされた包みを丁寧に剥がし、臨也は出てきた小箱を開ける。
中身はまた小箱だ。ただし、その形状に非常に見覚えがある。

………。どうしよう。俺の予想通りならこれは今すぐ突き返すべきものだ。
冷や汗を流して固まる臨也。だが、目の前の相手は真剣だ。いまそんな行動をとれば、あまり考えたくない結果になりそうだった。
とりあえず、万が一の可能性で予想が外れることを願い、中身を問うことにする。

「ねえ、シズちゃん…。すっっごく聞きたくないんだけど、これの中身って…」
「ちゃんと給料三か月分だ」

すがすがしいほどきっぱり言い切る静雄に、臨也は引く。ドン引きだ。
二人の関係を考えれば、誕生日プレゼントにエンゲージリングとか、本気で笑えない。
重い。重すぎる。軽い気持ちで受け取れるような代物ではない。
天敵の行動が四月馬鹿のそれなら良かったのに、あいにく今は五月で。
臨也は返事待ちなのだろう相手を凝視しながら頬を引きつらせた。
そして呟く。

「…いくらなんでも重いよシズちゃん」



※臨也さんのプロフもう少し早く出てくれたら企画かなんかやったのに!とか思いつつ。















超短文7題4−6 別離


別れることを恐れるのは無意味だ。
ずっと、そう思っていた。
出会った以上いつか別れるのが当たり前で、疑問にすら思わなかった。
だというのに。


「こんなに痛いものだとは、思わなかったな」

見上げた空には満天の星。
かすれた声で臨也は呟き、すんと鼻を啜った。

「シズちゃんのばーか」

切り出した別れに返されたのは小さな応え。
引きとめる言葉がないことに、安堵すべきなのか哀しむべきなのかさえ、もうわからなかった。

「あーあ…俺ひとり馬鹿みたいだ」



※雰囲気だけ小話。















超短文7題4−7 眼鏡


「なにかな?」
「…いや、お前目ぇ悪かったか?」
「別に悪くないよ」
「じゃあなんでんなもん…」
「今日これから会う依頼人の趣」
「取れ」
「速攻そうくるとはさすがに予想外だな。安心していいよ、これは単なる気分でかけてるだけだから」
「………」
「そんな、お前の言うことは信用できない!って目で見ないでよ」
「………」
「えー、と…似合わないかな?」
「………」

静雄の手が伸びてきて、ひょいと臨也の顔から眼鏡を取り上げる。
それを黙って見ていると、代わりとばかりに静雄のかけていたサングラスを渡された。

「依頼人に会うんならそれつけてけ」
「………っ」

次の瞬間、臨也は盛大に吹き出す。
意味がわからない。が、何がしたいかはよくわかった。

「あはははっ、はは、はっ…もシズちゃんってば、かわいすぎ!」

存在を主張する青いレンズのサングラスを手にしたまま臨也はしばらく笑い続けて静雄を憮然とさせた。



※シズちゃんのちょっとした主張。