超短文7題 3
※memoログ。3−1〜3−7まで。









超短文7題3−1 例え話


「たとえば俺がシズちゃんを好きだとして」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ」
「例え話だよ。俺がシズちゃんを好きとかありえないっていうか気持ち悪い」
「………」
「たとえばシズちゃんを好きだとしてさ、こうやって身体の関係だけ続けてるのって結構苦しかったりするのかな?どう思う?」
「どうでもいい」
「あはは、それよりヤらせろって?ケダモノだなあシズちゃん」
「うるせぇ。手前だってそうだろうが」
「まあ、気持ち良いことは好きだしね。最近はシズちゃんもうまくなったしねえ?」
「………」

ぴくりと方眉を跳ね上げ不愉快そうな顔をした静雄に臨也はくくっと笑った。

「でもさ、例えばの話、好きになった相手に身体だけしかいらないって言われたらキツイよね。俺はシズちゃんを好きなわけじゃないから気持ちよければそれで良いけどさ」
「うるせぇ、うぜぇ、黙れ」
「はいはい黙りますー。っと、その前にもうひとつ質問いいかな?」
「あァ?いい加減にしろよ手前」
「これだけだから」
「さっさとしろ」
「…せっかちな男は嫌われるよ」

苦笑して、臨也は静雄をひたと見つめた。

「シズちゃんは俺がシズちゃんを好きだって言ったらどうする?」



※身体だけの関係な二人。臨也さんの本心はどうなのか。















超短文7題3−2 理解不能


「それ食わねぇんならよこせ」
「ん、どーぞ」

「あ、それ頂戴?」
「おう」

………。

「ねぇ、君たちって本当に仲悪いのかい?」
「…ノミ蟲は嫌いだが食い物に罪はねぇ」
「俺、好き嫌い多いんだよねー」
「だからガリガリなんだよ」
「そんなに痩せてないよ」
「…あんま痩せてると抱き心地悪ぃんだよ」

………。

「これで仲が悪いとか言われたってねぇ?」
「…俺に話を振るな」

ホント、君たちってよくわからない。
そう言って、新羅は自分の弁当箱の中身をつついた。



※ありがちネタで。たぶん来神時代。















超短文7題3−3 煙草


「…?」

ふわりと漂う香りに臨也は首を傾げた。
よく知った匂い。それが香る先を探って、ああ、と納得する。

「…こんなとこでまで存在を主張するとか、ホント最悪」

たった一晩で自身のジャケットに染み付いたその匂いに、臨也は小さく呟いた。



※煙草は匂いがつきやすいよねという話。















超短文7題3−4 逃走


「いーざーやーッ!手前待ちやがれ!」
「待ったら俺死んじゃうよ!」
「死ねっつってんだろおがよぉッ!!」
「げっ」

ギリギリで避けたポストが前方で派手に転がる。
あーあ、アレいくらすると思ってるのさ。

「シズちゃんってばホント怪物」
「殺す!殺す殺す殺す!!」
「はは、そればっかだねぇ…ッ!」

今度はどこかの看板。これも避ける。本当にシズちゃんは今日も絶好調に化け物だ。

「ねーシズちゃん!」
「あァ!?」
「しーずちゃんしずちゃん!」
「手前何が言いてえんだ!!つか、俺はそんな名前じゃねぇッ!」

空き缶で骨折は洒落にならないよシズちゃん。

「あはは。ねえシズちゃん」
「うるせぇ黙れ!さっさと死ね!!」

一個二個三個。うん。ゴミ箱も当たると痛いけど数が多い空き缶やペットボトルの方が厄介だな。

「シズちゃん、俺ね!シズちゃんのこと大っ嫌いだけど大好きだよ!」

………。おや、リアクションなしか。つまらない。まあいいや。フリーズしてる間に逃げよう。

「そういうことで。またね、シズちゃん!」



※言い逃げ臨也さん。告白も逃走手段のひとつです?















超短文7題3−5 沈む


「…いや、ありえないだろ…」
ぽつりと呟く。
「ホントありえない」
大っ嫌いな相手を、実は好きだったとかありえない。
「勘弁してよ。冗談じゃない」
嫌だ。ありえない。
「…大体さ、これって所謂告白前に失恋決定ってやつじゃん」
自分で言って、へこんだ。
そのまま、何もする気が起きなくて俺はソファに沈んだ。



※このお題は本気で思い浮かばなかった。















超短文7題3−6 感触


「ねーしずちゃん」


「しーずちゃん」

困ったなぁと臨也は呟き空を見た。
視界一杯に晴れ渡った空が広がっている。

「シズちゃんいい加減起きようよー」

学校の屋上は暖かく昼寝におあつらえ向きだったが、さすがにもう2時間だ。いい加減臨也は起きたかった。
だというのに、臨也の身体を包み込む若干重くて硬い感触がそれを許さない。
寝てる時まで怪力とかどういうことだ。そう思って臨也は嘆息した。

「あー…さすがに寝返りくらいうちたいなー…」

コンクリートのせいで痛む背中とがっしりと自分を押さえ込む腕のせいでろくに身動きが取れないのだ。
新羅でも門田でもいい。とにかく静雄の目を覚ましてくれる存在の来訪を、臨也は心から希求した。



※来神時代。たぶん『猛獣』設定。















超短文7題3−7 一緒


「しーずちゃん!」
「あ?」
「あーんして」

少し首を傾げたが、静雄は臨也の言葉に素直に口を開ける。
その口にクッキーがひとつ放り込まれる。

「………」
「おいしい?」
「…うまい」
「今日の調理実習で作ったんだ。いつも作ってるけどたまにはみんなで作るのも面白いねぇ」

いや、やっぱり人間は面白いよ。人ラブ!そう言って笑う臨也はご機嫌だ。
逆に静雄が若干機嫌が下降した様子。

「…もっとよこせ」
「いいよー。シズちゃんに全部あげる」

あーんして?と小首を傾げる臨也と最初から食べさせてもらうつもりだったらしくやはり素直に口を開ける静雄。
そんなバカップルをぬるい眼差しで見ていた新羅は、あーあと呟いて視線を反らした。

「ホント、四六時中一緒でさすがに鬱陶しいなあ」



※自重しない人たち。『猛獣』設定。来神時代、クラスは一緒じゃない設定で。